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ぼくの大好きな奥さん⑤ 寝かしつけ中の一コマ 

ぼくは奥さんが大好きだ。1年ちょっと前に娘が生まれたけれど、
ぼくの中の大切な人ランキングは相変わらず奥さんが1位で娘が2位だ。

娘にはちょっと申し訳ないけれども、まぁ仕方がない。

ちなみに奥さんのランキングは間違いなく娘が1位だ。ダントツだろう。
ぼくは2位に食い込めていることを願うばかりだが、怖いので答え合わせはしないようにしている。

これも幸せの秘訣。世の中知らなくてよい事はたくさんある。

さて、話は変わるが中野家では娘の寝かしつけはぼくの仕事である。

一般的には奥さんがやる家庭が多い?ようにも思うが、中野家ではぼくの仕事だ。

もちろんこれには理由がある。

娘は奥さんと遊ぶのが楽しすぎるからなのか、
夕飯を食べて・お風呂に入って・9時前から奥さんが寝かしつけを始めても、
それから2時間くらい満面の笑みで「キャッ♪キャッ♪」と遊んでいる。

一向に寝る気配が無い。

むしろ昼間よりも積極的にハイハイしている位だ。

奥さんが寝かしつけに入ってから暫く経って、ぼくの仕事が一段落したり、
寝る準備が整った頃にそっと寝室をのぞいてみると、
そこには、薄暗い部屋のなか満面の笑顔で動き回る娘と、波打ち際にぐったりと打ち上げられたような
奥さんが横たわっている…という光景が現れるのだ。

この寝かしつけの2時間が奥さんの大きな負担になっていたので、
ダメ元で「ぼくが寝かしつけしてみようか?」と提案した。

ダメ元だと書いたのにも、もちろん理由がある。

それはぼくが娘を抱っこすると、直前までどんなに機嫌が良くても30秒ももたずに泣きだす、
身を乗り出して奥さんに移ろうとするという事態となり、抱っこ成功率が極めて低い。

感覚的には勝率20%くらいなので、野球でいえば2割台の打者。間違いなく補欠である。

 奥さんもそんなぼくの実績を理解しているので、
最初は「気持ちは有難いけど、戦力にならないと思うから…」と比較的ストレートに断っていた。

ただ、寝かしつけ2時間が何週間も続くとさすがの奥さんもワラにすがる思いで
「お願いしてみようかな…」と言い出したのだ。それがだいだい1ヶ月くらい前だ。

さて、そんなワラ役のぼくもすぐに寝かしつけられるとは思っておらず、
最低1時間の戦い、できれば今日中に戦いを終えたい…くらいの覚悟で娘を抱きかかえるのだ。

案の定、抱きかかえた瞬間に、それはもうすごい反り返りで泣く。
泣きじゃくる。泣きわめく。これでもかっていうくらい泣く。

リビングで一息ついた奥さんが「何事!?」と小走りで駆けつけてくる。
何事もなにも、ただ抱っこしているだけなのだが…。

 「やっぱり無理だと思うから変わるね…」  奥さんが失望と哀しみをたたえながら言うのだが、
ぼくは頑なに断った。こんなにすぐに(時間にして数分くらい)諦めていては、提案した意味がない。

そもそも、ワラ役にすらなれていないじゃないか! 

「いやいや、戦いは始まったばかり。リビングで休んでて。」 

そうして奥さんを返して、娘の抱っこを続ける。とうぜん泣き止まない。
暴れて暴れて、手からこぼれそうになる。

もちろん絶対に落とせないので、ぼくはギューッっとより一層、娘を抱きしめる。
というより、窒息しないように最新の注意を払いながら、動けなくする。

そうして15分ほど上下左右に揺れていると、気づけばスースーと寝息を立て始めているのではないか!
恐る恐る両腕の力を緩めても、起きない。

スヤスヤと眠っている。

 娘の泣き声が急に、しかもあまりに早く聞こえなくなった事に驚いて、奥さんがまた寝室に入って来た。

 奥さん:「嘘でしょ。もう眠ったの?」

ぼく:「まぁ、寝たよね。ぼくの手にかかればこんなもんかな(得意気)」

奥さん:「たまたまでしょー。」

寝かしつけを替わって最初の数日はまぐれだと思っていた奥さんも、
それが一週間も続くとぼくのパフォーマンスを認めざるを得ない。

平均寝かしつけ時間は20分前後であり、奥さんの2時間(120分)の1/6だ。

それから寝かしつけはぼくの仕事になった。
奥さんの夜の負担が少し軽くなったし、ぼくの負担もそれ程でも無いから、この役割分担は大成功だ。

 と、一週間経ってぼくが満足していたら、
ある夜、奥さんが寝かしつけを始めて5分後くらいに寝室に入ってきた。

そしてぼくの腕の中にいる娘をみて、  「かわいいね~。本当にかわいい。あーかわいい。」
 と言って頭をなでたり、頬をツンツンする。

普段なら微笑ましい光景だが、今は寝かしつけの真っ最中。
「え、何してんのこの人?」としか思わない。

現に、奥さんの気配を感じて寝かかっていた娘が覚醒し始めている。

ぼく:「いやいや、何してんの!起きちゃうから止めてくれる??」

奥さん:「本当に可愛いね♪よちよち」

ぼく:「可愛い可愛い。知ってる知ってる。えっと、このやり取りいまいらないよね?」

奥さん:「なんて可愛いのかしらー。ママ、見とれちゃう!(頬をツンツン)」

ぼく:「マジで起きるからあっち行ってくれぇぇぇぇぇ!!!」

 どうやら、自分の時にはまったく寝ようとしない娘が、
ぼくが寝かしつけをするとすぐに寝て、可愛い寝顔を見せているのが悔しいのだそうな。

何なのその感情。
寝ついたあとに寝顔を見に来れば良いじゃん。 邪魔する必要ないし。

などと思いながらも、そんな天真爛漫な感じの奥さんがぼくは大好きなのだ。

もちろん、娘の寝顔も大好きである。 

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