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新規事業の成否を決めるインタビュー品質

目次

新規事業企画はインタビューから始まる

新規事業企画で「誰の・どのような課題を解決すべきか」を考える際に、
必ず実行するのがインタビューです。
誰もが容易に実行できるがゆえに、インタビュースキルは軽視されている印象があります。

新規事業企画の出発点となるインタビューの品質が低いと、
その後に考えるビジネスモデル・ビジネスデザインの精度も低くなります。

本記事では、インタビュー品質を高めるためのインタビュー企画のポイントをお伝えします。

インタビュー企画で考えるべきは概ね以下のとおりです。

<インタビュー企画で考えること>

●目的:
-インタビューで把握・検証・確認したいことは何か
-インタビュー後に実施する意思決定や行動は何か

●対象者:
-誰にインタビューすべきか
-何名にインタビューすべきか
-どのような順番でインタビューすべきか

●質問項目:目的を達成するための質問項目は何か

●時期:
-意思決定や行動につなげる為には、いつまでにインタビューを終える必要があるか
-対象者が前向きに協力してくれる時期はいつか

インタビュー企画で考えること ①目的

インタビューで把握・検証・確認したいことを明確にします。

「顧客が現在利用しているサービスの満足点や要望をヒアリングし、サービス改善へとつなげる」
「メンバーのキャリアビジョンをヒアリングし、任させるミッションや業務の決定に活かす」
「料理に関する課題感をヒアリングし、それを解決する新しい調理器具のコンセプトをつくる」

このようにインタビュー目的はさまざまですが、
「サービスの満足点や要望→自社サービスの改善」
「キャリアビジョン→任せるミッションや業務の決定」
「料理の課題感→新しい調理器具のコンセプト開発」のように、

把握・検証・確認したい事とインタビュー後に行う行動や意思決定は必ずセットで考えます。

漠然と課題感だけをヒアリングすると、質問項目が抽象的で散漫になり行動や意思決定につながりません。
インタビューされる側(インタビューイー/ interviewee)も、
話した内容がどのように活かされるのかは気になるものですが、何の行動・意思決定にもつながっていなければ、
拍子抜けします。次回以降に協力する気持ちが萎えてしまいます。
何より、そのようなインタビューは時間の無駄です。

お互いに時間という貴重な資源を使って実施するのがインタビューですから、
行動・意思決定につながるための情報収集の時間にすべきです。

その為にも、まずインタビュー目的を明確にしましょう。

インタビュー企画で考えること ②対象者

まずはターゲット候補がインタビュー対象者になる

インタビュー目的を満たす対象者を考えるわけですが、
インタビュー対象者の設計がインタビューの質を左右するといっても過言ではありません。
丁寧な設計が必要です。

たとえば前述の「顧客が現在利用しているサービスの満足点や要望をヒアリングし、サービス改善へとつなげる」
というインタビュー目的。対象となる顧客が数名~20・30名ならば頑張って全員にインタビューする事も可能ですが、
数百・数千にもなると現実的ではありません。情報を集めたい顧客は誰なのか?を精緻化する必要があります。
たとえば、取引金額・取引期間・利用しているサービスの種類・業界・役職など、絞り込み条件を洗い出していきましょう。

「料理に関する課題感をヒアリングし、それを解決できる新規事業コンセプトをつくる」というインタビュー目的も、
料理をする人の条件が不明確なので精緻化が必要です。性別、世帯の働き方(共働き・専業主婦)、
子どもの有無や子どもの年齢、料理の重視点(健康志向、効率優先など)など絞り込み条件はさまざま考えられます。
また、料理と聞くとついつい調理だけを想像してしまいますが、
買い物→冷蔵庫管理→調理→洗い物→片付けの様に複数の工程があります。
全工程における課題感を把握したいならば、全工程を自分でやっている人にインタビューしなければなりません。
買い物→冷蔵庫管理→調理は自分、洗い物→片付けは配偶者と役割分担されているケースも多いので、注意が必要です。

すべてのビジネスには、既存顧客とこれから顧客になってもらいたい顧客(=ターゲット顧客)がいて、
ターゲット顧客は性別・年齢・ライフステージ・業界・部門・職業・保有予算など何らかの切り口で
絞り込む必要があります。
もし絞り込まれていないならば、まずターゲット顧客を決めなければなりません。
そのターゲット顧客をカバーするような対象者選定をする必要があります。

しかし現場では、こうしたターゲット顧客が曖昧なまま、
何となく聞けそうな人・聞きやすい人にインタビューしている・・・という事がよく起きています。
本当は自社商品に不満をもっている人から課題を聞き出すべきなのに、関係性が深い担当顧客にインタビューする。
本当はターゲット顧客である30代の未婚女性から健康課題を聞き出すべきなのに、
40代・既婚女性の配偶者や同僚のインタビューで代替してしまう等です。

このような事態はインタビュー対象者の重要性を理解していない為に起こる事もあれば、
聞くべきインタビュー対象者を探せずに起こることもあります。
前者は改めて重要性を説明することで対応できますが、後者は対象者を集める力(リクルーティング力)を
高めないと解決できません。普段から社内外で広い人脈を築いておくのが理想です。

仮に自分の人脈ではリクルーティングできなくても、
同僚・パートナー企業・家族・友人・知人・パートナー企業などから紹介してもらう、SNSで呼びかける、
一定の予算があればビザスク・ミーミル・ミルトーク・Sprintのようなインタビューサービスを活用する、
調査会社に対象者リクルーティングを依頼するなど、さまざま手段で対象者を探していきましょう。

適切な対象者にインタビューができないと、現状把握や課題設定の精度が大きく低下します。
場合によっては誤った情報・不要な情報を集めてしまい、ミスリードやミスジャッジのリスクを高めてしまいます。
「丁寧にインタビュー対象者を設計し、計画通りにインタビューを実行できること」は
ビジネスの成功確率を左右する非常に重要なポイントだと認識しておきましょう。

ステークホルダーを洗い出す

インタビュー対象者を考える際に、課題を抱えている本人へのインタビューだけでは不十分です。
誰でも周囲の人々から何かしらの影響を受けており、それらが行動や意思決定の制約条件になったり、
促進材料になったりしています。課題を抱えている本人や真っ先にインタビュー対象者として思い浮かんだ人の、
ステークホルダー(関係者)を洗い出しましょう。

たとえば、次のようなステークホルダーが考えられます。

・BtoBビジネスの発注承認:本人、上長(課長)、上長の上長(部長)、声が大きい他部門長  等
・キャリアビジョン:本人、配偶者、本人の同期、友人、同世代で活躍している著名人 等
・居住地の選択:本人、配偶者、親、子ども、不動産営業、地元住民 等

ステークホルダー全員へインタビューするのは難易度が高いですが、影響が強いと思われる人を仮説で考え、
数名にはインタビューするよう心がけてください。

エクストリームユーザーへのインタビュー

あるテーマやサービスに対して、極端に利用頻度が高い人・低い人、
あるいは極端にポジティブな人・ネガティブな人のように、
極端な関わり方をしているユーザー(=エクストリームユーザー)へのインタビューは、
新しい発見が得られる確率が高いものです。

エクストリームユーザーへのインタビューとは、次のようなイメージです。

・新しいダイエット食品の開発のために、断食道場に毎月通う人へインタビュー
・スマートフォンの新機能開発にあたり、ガラケー利用者へインタビュー
・新しい転職支援サービスの企画にあたり、転職回数が10回以上のビジネスパーソンへインタビュー

価値観や行動が極端な人を選ぶため、普段の生活範囲ではなかなか出会うことがない方々です。
このような方々は、独自の価値観や世界観が強く形成されていることも多く、
だからこそ、私たちの常識や考えを超えた思いもよらない発見・気付きを得られるのです。

何名にインタビューすべきか

私の経験値からの提案ですが、
情報を得たいセグメントごとに5人インタビューすれば50%、10人で70%、
20人にインタビューすれば90%の課題感がわかると感じています。

セグメントとは、課題感・価値観・行動特性などが似通っている集団の括りのことです。

時間対効果(費やした時間に対して発見が増えていく度合い)や現実的に使える時間などを考慮すると、
セグメントごとに3~7名位が良い塩梅です。セグメントを細かく設定いれば3名、大雑把であれば5名以上にするなど工夫をしていきましょう。

どのような順番でインタビューすべきか

語られる機会は少ないものの、実は重要なのが「インタビューを行う順番」です。

誰に・何名インタビューするかが決まったら、
どの順番でインタビューするのが効率的かつ効果的なのかを考えていきます。
この順番が正しい、という固定的な解はありません。次のような観点を踏まえて、
その都度、最適な順番を検討していきます。

【1】本命のインタビューは中盤に設定する

インタビュー対象者を考えていると、「この人の意見は絶対に聞きたい」という本命が出てきますが、
本命のインタビューは中盤に設定しましょう。合計10名のインタビューであれば、4~6番目に設定するイメージです。
というのも、最初の数名へのインタビューは質問項目の設計や時間配分に甘さが残っており、
質が高まりきらないもの。そこに本命のインタビューをもっていくのは得策ではありません。
2~3名にインタビューし、きちんとラップアップを行えば、項目・聞き方・時間配分・優先順位は確実に
改善されますから、本命へのインタビューは中盤に設定すると効果が最大化されます。

ただし、インタビュー設定が後半になると重要意見を手にするのが遅れるので要注意です。
後半に予定していたインタビューはスケジュールやリソースの制約でカットせざるを得ない事もあるため、
中盤が最善です。また、本命インタビューは関係者全員が同席できるようスケジューリングします。
インタビューで得られる情報量は豊富がゆえに、非同席者との間で情報格差が生まれ、
その後の議論がかみ合わなくなる為です。

【2】知見を豊富にもっている人のインタビューは序盤~中盤に設定する

インタビューテーマに関して豊富な知見をもっている人は、序盤~中盤に設定しましょう(本命以外)。
知見が豊富な人のインタビューでは、新しい発見も多く、その後のインタビューで何を・どのようにヒアリングするのが
有効なのか、という肌感覚を得ることができます。インタビュー相手に色々と教えてもらうイメージです。
このように書くと、序盤設定が最善のように感じると思いますが、必ずしもそうではありません。
インタビューは、インタビューする側の質問の質が高いほど、回答する側の質も高まっていきます。
特に知見が豊富な相手とはこの相乗効果が発揮されやすいもの。こちらの質問に触発されて相手の頭が整理され、
より明快な情報を得られるという事が起きます。

序盤に設定してしまうと、インタビュー側がそこまで良い質問を投げられない為、
相乗効果を手にする可能性は大きく低下します。本当に右も左もわからない状態ならば序盤で教えを請うても良いですが、
出来るだけ事前に土台となる知識や視点をもっておき、中盤に設定するのが理想だと思います。

【3】理路整然としているが、主観が強い人は後半設定

理路整然としている様子は、論理的・構造的に物事をとらえている事の証明にはなりますが、
客観的で現実を的確に表している、とは限りません。
極めて個人的な見解・主観を理路整然と話している可能性があります。論理的だが主観が強いタイプのインタビューは、
情報が少ない前半に実施すると偏った見方につながるリスクがあるので、なるべく後半に設定しましょう。

インタビューするまではどのような人が判断できない時もありますが、
SNSでの情報発信をチェックする、事前に人柄が想像できるやり取りを意図的に行う、紹介であれば紹介者に
それとなく人柄・特徴を伺うなどの工夫によって、判断材料は得られます。

【4】役職が高い順にインタビューすべきときもある

あまり健全ではありませんが、ビジョン・成長戦略・組織課題など企業の重要事項に該当するテーマの
インタビューなどでは、役職が高い順にインタビューを設定するのが最善な時もあります。

ときどき、インタビューの冒頭で「これまでに誰にインタビューしたのですか?」という質問をされる事があります。
質問の意図としては、
「過去のインタビュー履歴を考慮して、自分が何を話すのが最善かを判断したい」というケースと、
「自分がA氏よりも先にインタビューされている(=重んじられている)事を確認したい」というケースがあります。
前者であれば良いのですが、後者も一定割合で存在します。意図が後者かつ既にA氏にインタビュー済みだった場合、
間違いなくその後のインタビューの口が重くなります。結果的に、得られる情報の量・質はともに低下します。
貴重な時間を使う以上、滑らかに話をしてもらえるに越した事はないので、役職順という観点も意識しておきましょう。

【5】最初の頃に実施した人の意見は忘れられがち

インタビュー順番の関連話題です。インタビュー人数が10人以上になってくると、
最初のインタビュー実施から1ヶ月以上経過する事はよくあります。
インタビュー期間が長くなると、最初の頃に実施した人の意見は忘れられがちです。
忘れていなくても、発言内容の印象は間違いなく薄れます。

反対に、直近のインタビューは記憶に新しいので、発言内容の影響力が大きくなりがちです。
インタビュー時期・順番が要因による印象変化は、客観的な理解をゆがめるため対策が必要です。

具体的には、インタビュー後にラップアップ(振り返り)を等しく行う、
定期的に過去分のインタビュー記録を見返す等を行い、記憶への定着が公平になるよう配慮しましょう。

インタビュー企画で考えること ③質問項目

目的達成につながる質問項目

インタビュー目的を達成するために必要な情報は何か?という観点から、質問項目を考えていきます。
質問項目を考える際によくあるのが、
知的好奇心が刺激されて「あれも聴きたいこれも聴きたい」病が発生することです。
その病に気付かずに質問項目を考え続けていると、気づけば項目が何十個も出てくることがあります。
そのズラッと並んだ質問項目を眺めていると、知的アウトプットを量産できたような達成感を感じるものですが、
そういう時ほど不必要な項目が紛れ込んでいます。
「その項目は本当に必要か?今回のインタビュー目的にかなっているか?」をチェックすることを心がけて下さい。

インタビューは時間だいたい60分。
質問項目に優先順位をつけておかないと、肝心な内容を深掘りできずに時間切れになります。
インタビューアー(インタビューする人)が初期的な質問項目を考える→インタビュー同席者・プロジェクトメンバーで
項目の抜け漏れを追記する→項目の優先順位づけを行うというプロセスで、質問項目を精緻化しておきましょう。

質問項目の検討にも仮説が重要

良い比較には良い仮説が重要とお伝えしましたが、良いインタビューにも良い仮説が重要です。

数字がもつ想い・背景を理解するためのインタビューであれ、
無知なる現状を理解するための最初のインタビューであれ、仮説の重要性は同じです。
前者はすでに現状が数値化されている為、数字を分解する・時系列比較するなどの分析を行えば、
何らかの仮説は構築できるでしょう。

多くの方が仮説構築の難しさを感じるのは後者です。
自分がまったく無知な領域・テーマを理解するためのインタビューを実施する際、
「インタビューで色々と教えてもらおう」と考え、事前に仮説を考えずに(ある意味ノープランで)インタビューに
臨んでいる人が散見されますが、非常に残念な気持ちになります。

インタビューを受ける側になればわかりますが、インタビューに協力するモチベーションは、
「相手の課題感やビジネスに何らか共感し、自分の話がその改善や解決に役に立つことを願っている」が大きいものです。
謝礼が発生することもありますが、お金よりも善意や社会貢献意欲などがモチベーションになります。
そのような気持ちで臨んだインタビューで、相手がインタビューする領域・テーマについて、
ほとんど無知な状態で「何を・どう聞けば良いのかもわからないので、知っていることを何でも教えていただけますか?」と言われたらどうでしょうか。拍子抜けしますよね。このインタビューの必要性・重要度を疑ってしまいます。

このインタビューの事前準備については、私が参画した直近のプロジェクトでも苦い経験があります。

自分がまったく無知な領域・テーマであっても、関連書籍を数冊読めば、重要な論点やキーワードは見えてきますから、
それらを取っ掛かりに「この方は●●という課題をもっていないだろうか?」という仮説を複数考えることはできます。
企業が上場していれば、決算説明資料・アニュアルレポート・P/Lなどを読み込めば、事業課題は概ね想像できます。
インタビューが必要になる仕事は関係者が必ず複数いますから、
役割分担して書籍・専門誌・Web情報など、「浅く広くインプットする→仮説を考える」という作業(ある意味、
単純作業です)に時間を割きさえすれば、仮説が一つも浮かばない、何を・どう聞けば良いのかわからない、
という状態はありえないのです。

これはインタビューに限らず、あらゆる面談・面接でも言えることです。

採用面接であれば、事前に履歴書・職務経歴書などに目を通さなければ、何を質問するのが最善なのかはわかりません。
部下とのキャリア面談であれば、その部下のWill(やりたい事)・Can(できる事)・Know(詳しい事)・Personality(キャラクターや価値観)などを、これまでの会話や仕事ぶりなどを材料に仮説を考えることが重要です。

何を聞けば良いかわからない、仮説を考えられないと感じたらならば、それは単純にインプットが足りていないだけです。
そして、仮説を考える時間を確保していないだけなのです。

良い質問項目をつくる為には、良いインプットと良い仮説が重要。

という事を、強く認識しておきましょう。

質問項目をインタビューシートに落とし込む

考えたインタビュー項目は、ExcelやWord等でインタビューシートへ落とし込みます。
当日のインタビューが効果的に進むよう、以下ポイントを押さえて記載します。

①インタビュー項目は、回答者が答えやすい順番へ並べ替える

自分が聞きたい順ではなく、回答者が答えやすい=回答者の気持ちや思考がスムーズに流れやすい、
という点を意識して、項目の順番を整えましょう。

<質問項目の順番を考えるポイント>
 ・「総論・抽象的な話→個別・具体的な話」
 ・「単純な質問→複雑な質問」
 ・「過去→現在→未来」  
 ・「事実(客観)に関する質問→主観に関する質問」
 ・デリケートな質問は、関係性が構築できた中盤以降で
   例)「あなたの組織の本質的課題は?」「あなたの人生の満足度は?」

②インタビュー項目ごとに優先度を決める

限られた時間を有効活用するために、項目ごとの優先度を設定しておく必要があります。
項目ごとに「高(必ず聴きたい)」「中(できれば聴きたい)」「低(時間があれば聴きたい)」のように
3段階で重要度を設定しておきましょう。

インタビュー当日は、
「協力者の方が急遽30分しか取れなくなった」
「なかなか会話が噛み合わない」
「先方が話し好きで1つの回答にとても時間がかかる」など理由はさまざまですが、
「時間が足りなくて聴きたいことが聞けない」という事態に陥ります。
そのような時は、話の流れが多少ちぐはぐになったとしても、
「高(必ず聴きたい)」の項目を積極的に質問していきましょう。

③インタビュー項目ごとの時間配分を決める

こちらで深く聴きたい質問内容と、回答者が話しやすい内容は違うものです。
回答者が話しやすい流れを保つことは重要ですが、特定の質問に時間を割きすぎてしまい、
重要度の高い質問ができなかった…ということを避けるためにも、
質問項目ごとに割くことができる時間の目安も設定しておきましょう。

私はインタビューシートをExcelで作成していますが、概ね次の内容を記載しています。

■インタビューシートに記載する内容
・インタビュー実施日
・インタビュー相手の対象者条件(インタビュー企画で設計した対象者条件の詳細情報)
・質問項目
・質問項目の優先順位
・インタビュー相手が話した内容(事実)
・自分の疑問や意見・気づき(主観)

インタビュー内容は集計・加工して活用するのでWordやメモ帳ではなく、Excelをお薦めします。

インタビュー同席者が複数いる場合は、必ず同じフォーマットでメモを取るよう周知します。
同じフォーマットを使えば、インタビューでの確認事項・優先順位が揃いますし、
情報を統合するのも非常に効率的です。

また、インタビュー相手が話した内容と、自分がインタビュー中に得られた気づきは、必ず書き分けましょう。
フォーマットでも記入する欄を明確に分けます。
インタビュー相手が話した内容は事実として整理・統合し、
そこを出発点として何がわかるか・何が言えるかという解釈をしていきますが、事実に主観が入ってしまうと、
現実を客観的に捉えられません。ミスリードにもつながります。

悪気なく自分の意見を混ぜ込んで記載する人もいるので、
インタビューシートの記載方法を事前に確認しておく事も重要となります。

インタビュー企画で考えること ④時期

インタビューアレンジには時間がかかる

インタビュー実施時期については、
インタビュー結果をもとに、いつ・どのような議論や意思決定をしたいのか?から逆算して決めていきます。
ここで注意したいのは、話を聞きたい人を見つけること・話を聞きたい人の予定を押さえることは案外難しく、
想定以上に時間がかかるという点です。対象者のリクルーティング難易度が高い場合、
最初のインタビュー実施が企画から1~2ヶ月後という例も珍しくありません。

インタビューアレンジの難しさをスケジュールに考慮できていないと、
「デッドラインに間に合わないから◯◯(話を聞きたい人と条件が異なる人)さんのインタビューで代替するしかない」
という事態に陥ります。インタビュー対象者で設計した対象者と違う人に話を聞いても、あまり意味はありません。
お互い時間の無駄になります。したがって、インタビュー対象者の設計は早めに行い、
インタビューアレンジの期間を出来るだけ長く確保することが重要になります。

「いつ聞いても回答は同じ」ではない

インタビュー時期を考える際に「繁忙期を避ける」のは鉄則です。

そもそも繁忙期に打診するとインタビューを断られる事も多いのですが、
仮に協力OKしてもらったとしても
「繁忙期のインタビューは回答内容の質も低くなりがち」という点は留意しましょう。

繁忙期に時間を捻出してくれる事は有難いのですが、忙しい方のインタビュー対応の傾向として、

・インタビューに集中しきれておらず、回答が表面的になる
・説明が抽象的で大雑把になる
・新しい物事への評価が慎重になる

などが見られます。

とにかく忙しいので、現在の業務・ミッションに直結しないインタビューへの対応は、
「おざなり対応」になりがちです。また、自分や自部門の業務増・オペレーション変更などにつながる
気配を感じたものについては、基本的には慎重(後ろ向き)な回答になります。

これはその人の問題ではなくタイミングの問題で、
往々にして、業務が落ち着いているときに再インタビューすると、
丁寧に・より深く・前向きな話をいただけるものです。

同じ人へのインタビューであっても、インタビュー時期によって回答は変わります。
インタビュー相手の知見や感情がもっとも客観的に伺えそうなのはいつか?という観点を忘れないようにしましょう。

以上がインタビュー企画のポイントです。
繰り返しですが、ユーザーインサイト起点の新規事業企画の出発点はインタビューです。

インタビュー品質にこだわって的確な顧客課題抽出をおこなっていきましょう。

それではまた。

❏Udemy動画紹介
・新規事業企画のアプローチとポイントを解説 >>『予算がとれる!ユーザーインサイト起点の新規事業企画の超基本』
・実践的なインタビュー技術の体系化  >>『価値ある情報を集めるインタビューの技術』

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