前記事でメンバーを丸ごと理解する重要性をお伝えした。
この記事ではCanやKnowを把握する視点として、別の切り口を提案したいと思う。
たとえば、「彼は仕事を効率的にさばくのは得意だけど、ちょっと雑だよね」という会話があったとする。
ふだんの会話レベルならば特に問題ないと思うが、管理職がメンバーを把握する粒度としては問題だ。
効率的にさばくことを可能にしている要因、ちょっと雑になっている要因それぞれを、
知識・考え方・技術に分解して理解する必要がある。
マネジメント・管理職が、メンバーの仕事ぶりを因数分解してあげる
「効率的に仕事をさばく事ができる」を因数分解すると、たとえば次のようになる。
【知識】
・効率化につながる仕事術や業務ツールをたくさん知っている
【考え方】
・仕事のスキル向上は量質転換だと思っている
・仕事が自分の手元に溜まらないよう意識している
・仕事は、丁寧さよりもスピードが大事だと考えている
【技術】
・ExcelやPPTなど、マイクロソフトオフィス製品の習熟度が高い
・仕事のフローが構造的に頭に入っている
・タスクの優先順位づけが常に頭の中で行われている など
「仕事がちょっと雑」を因数分解すると、次のようになる。
【知識】
・効率よりも丁寧さが重要な仕事やシーンがあることを知らない
・雑になっている部分を、誰かがフォローしていることを知らない
【考え方】
・仕事は自分一人で完結できていると思っている
・他人は全員、仕事ぶりが非効率だと思っている
【技術】
・周囲を気持ちよく巻き込むことが苦手 など
仕事の効率を高めている理由や雑になっている理由が、裏側には必ずある。
メンバー自身では気づけない事も多いので、
マネジメントや管理職が 因数分解をサポートしてあげること重要だ。
分解の視点はすでに伝えているが、以下の3つが重要となる。
①知識(知っていること、知らないこと)
②考え方(思考特性)
③技術(できること、経験していること)
①知識について、「何を知っていて、何を知らないか」を把握することが大切だ。
人間は知らないことは考えることができない。考え方を知らなければ、行動に移すこともできないから、
できるようにもならない。
よって管理職としては、メンバーが必要な知識をもっていなければ知識の提供をサポートする。
もちろん、必要な知識を懇切丁寧に教える必要はないが、読むべき書籍・文書などを提示してあげよう。
②考え方(思考特性)を理解することも重要だ。
たとえばメンバーがポジティブ思考かネガティブ思考かによって、同じ説明をしても、解釈が異なってくる。
物事のとらえ方が抽象的か具体的かによっても、同じ指示に対して動き方が変わってくる。
物事の捉え方が抽象的なメンバーは、指示をざっくり捉えるのですぐに動きだせるがミスが多い。
反対に物事の捉え方が具体的なメンバーは、確認が細かいのでミスは少ないが、スピードが落ちることがある。
このように考え方(思考特性)は、行動に大きな影響を与える。
しかし事前に思考特性を把握していれば、発生しそうな誤解やリスクを予測できるので、
指示の出しかたや伝え方などを工夫できる。
③技術については、まず「できること」を理解する。
これは当たり前だ。何ができるかを理解していなければ、適切な役割や仕事をアサインすることができない。
できる事は本人も自覚しているケースが多いので、しっかりを会話をすれば誤解なく理解できる。
一方で、忘れられがちなのは「経験していること」である。
人材の流動化が進み、転職が当たり前になっている現代においては、
過去にどんな経験をしているのかを丁寧に把握した方がよい。
長らくエンジニアとしてモバイルアプリ開発に従事していたとしても、
前職や少し前のミッションで営業経験がある、という隠れた経歴が見つかることも多い。
営業経験がある=営業部門へ異動、という事ではなく、活躍の幅を広げるアサインメントを考える材料になる。
自分が面接に関与したメンバーであれば、職務経歴書を確認することで過去の職歴を知る機会があるが、
多くの場合はそうもいかない。
メンバーの活躍の幅を広げるためにも、管理職から能動的にメンバーの経歴をヒアリングしていこう。
皆さんはこのような丁寧さでメンバーのCanやKnowを理解できているだろうか?
ぜひ、自身の把握度合いをチェックしてみて欲しい。
それではまた。