本日付けで、電通マクロミルインサイトの代表取締役を退任するとともに、
15年間務めたマクロミルを退職した。15年間で多くの学びや出会いがあり、
その感謝の気持ちはFacebookに書いたので、ここでは15年間の学びを無理やり抽象化して振り返りたい。
わたしはまだまだ経営者の端くれだが、マーケティングリサーチ業界においては約10年間、
PLオーナー(PLに最終的な責任をもつ人)として経営に携わってきた。
その中で得られた最大の学びは「時間の重要性」、
もっと具体的にいえば「時間に対する態度や捉え方の重要性」だ。
今からお伝えする3つのポイントが、ビジネスで成果を出す上で非常に重要だったと思う。
①時間軸
たとえばマネージャークラスは半年後のあるべき姿から逆算、部長クラスは1年後から逆算、
経営は3~5年後から逆算して、ビジョン・戦略・計画を組み立てなければならない。
それぞれの役割に期待される思考の時間軸というものがある。
マネージャーが3年後ばかりを見ていたら足元のマネジメントや成果が疎かになるし、
経営が目先のことばかり考えていたら、未来にはつながらない。
経営ビジョンや戦略をもとに、
管理職がそれぞれの戦略・計画を考えることで会社の動きに一貫性が生まれる。
ただし、経営が常に正しい道筋を示すとは限らないから、
部課長が「もし自分が社長だったら?経営だったら?」という視座で、
経営の時間軸で物事を考えておく、という事も重要。
戦略や計画の精度はさておき、その時間軸を持てていれば経営と同じ視座で議論をする事ができる。
話し相手になれる。この短期と中長期の時間軸を使い分ける、という思考習慣はとても重要だ。
②時間配分
「何に時間を使っているか?」がその人の価値観を最も如実に表す。
なぜならこの世ので唯一増えないのは時間であり、その貴重さを日常的に意識していなくとも、
深く理解しているはずだ。そして、その時間の使い方の結果としてさまざまな物事の成果が現れる。
- 「顧客に向き合う」と言って、全然アポイントにいってない
- 「育成に注力する」と言って、育成に時間を割いていない
- 「成長したい」と言って、成長のための努力に時間を使っていない
あるあるである。何でも言うのは簡単で、実行することが難しいもの。
気をつけたいのは、ちょっとだけ多く時間を使うようになったら
「時間を使うようになった」と勝手に満足してしまうケースだ。
たとえば育成。
週に1~2時間くらい誰かに教える時間が増えたとして、その関わりだけで人が育つわけがない。
たとえば顧客との関係性構築。
週に1件くらいアポに行って話を聴くようになったとて、関係性が深まるわけがない。
たとえば学び。
月に1冊のインプットが増えたとして、戦略立案の精度が高まったり、ましてや教養が高まるわけがない。
すべて、そんなに簡単で甘いものではない。
だからこそ、「選択と集中」が必要になるのだ。
この期間はこれを学ぶ、これに取り組んで判断を下す、これに取り組んで成果を出す、
という風に「いま何をすべきかを適切に絞り込んでガッツリやる」。
そしてしっかり振り返る。PDCAをきちんと回す。これが選択と集中だ。
もちろん、絞り込む分だけ外した時のリスクはあるから、誰だって怖い。
だからみんなリスクヘッジとしてちょこちょこ色んな事をやるのだが、
そんないっちょ噛みでは、売上・利益につながる成果にはならない。残るのは自己満足だけだ。
目的が自己満足ならば問題はないのだが、成果を出したいならば選択と集中が必須である。
選択と集中は、「やらない事を恐れずに決める」と言い換えた方が伝わるかもしれない。
③時間の質
最後は時間の質だ。
時間配分が最適化されたとしても、使っている時間の質(濃さ)が低ければ成果にはつながらない。
その時間で達成したい事・得たい事を明確にして、それが実現される「タイムマネジメント」が重要だ。
顧客ニーズを把握する事が目的ならば、事前に課題の仮説を3つ位は考えて臨む。
メンバーのWill&Canを理解したい場合も同様で、
メンバーがやりたそうな事・できそうな事を事前に考えて臨む。
そうした事前準備をせずに臨む商談や面談は、たいてい質が低くなるものだ。
ドキュメントを用意する必要はなくて、考えてあれば良い。
事前に考えて、それをメモっておくだけで十分なのだが、これをキッチリやっている人はけっこう少ない。
ノープラン・準備不足でMTGを入れてくる人は本当に多いものだ。
私はそういう人達を「時間泥棒」と呼んでいる(いったん心のなかで)。
時間の捉え方・向き合い方を3つほどお伝えさせて貰った。
これらを全部実践していくと24時間365日体制の企業戦士という、つらい印象になるかもしれないが、
実態は真逆だ。時間軸・時間配分・時間の質がいずれも適切にマネジメントされると、
成果につながりながら、効率も最大化されるので、結果的に生産性も高まる。
すべては時間の使い方で決まるといっても過言ではない。
この普遍的だが力強い真実を、身をもって学べた15年間だったのかなと思う。