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【マネジメント・管理職の基本⑩】目標達成を支援する判断・動機づけ

納得感のある目標設定をした後は、目標達成を支援するのもマネジメントの仕事だ。
メンバーと信頼関係を構築できていれば様々な相談を受けることになる。
また日々ビジネスをしていると、想定外の問題も多々発生する。

管理職はこれら相談・問題に対して迅速に・適切に判断を下さねばならない。
まずは判断のポイントについて考えていこう。

目次

管理職の判断基準を明確にして、事前に周知する

適切な判断をするために重要なのは、判断基準を明確にし、それを周知するということだ。
たとえば次のような例で判断基準の重要性を考えていきたい。

あなたが営業マネージャーで、部下Aから値引きをしたい旨の相談を受けたとしよう。
正価100万円の商品だが、20%値引きを行い80万円で見積もりを提出すれば、
競合Bからリプレイス受注できるという状況だ。
あなたは競合Bからのリプレイス受注であることに価値を感じたため、20%値引きを了承した。
結果は無事に受注。良い判断だったと言える。

別の日に同じく部下Aから正価200万円の商品で20%値引きを行い、
160万円で競合Bからのリプレイス受注をしたい、という相談をもらった。
あなたは続けて20%の値引きを了承すると値引き癖がついて良くないと考え、
今回は値引きを承認しなかった。結果は残念ながら失注。
部下Aからは「同じ20%値引きなのに、なぜ単価が高い200万円の方を承認してくれなかったのか」と
苦言を呈されてしまう。

こうしたやり取りはよく見られるのだが、マネージャーが値引きの判断基準をもっておらず、
その都度その都度で判断している事が原因だ。
たとえば次のような基準をもち、事前に部下に伝えていればこうした事態は避けられる。

・案件単価100万円以上ならば、最大20%の値引きは許可する。
 ただし、担当全案件の値引率が10%を超えた場合は、売上達成していても考課で減点する
・競合Bからのリプレイス案件は、案件が赤字にならない限り、すべて値引きを許可する。
 ただし、期間はこの四半期限定。
・いかなる案件であっても、10%以上の値引きは会社・部門の利益状況よって都度判断する

など、さまざまな基準が考える。
どのような基準が適切かは会社や状況によるため、一概にいえない。
ただ値引きの例に限らず、「判断基準を明確にして事前に周知する」 ということは非常に大切だ。

明確な基準が事前に周知されていれば、メンバーは迷わずに仕事に取り組めるし、
メンバー自身が判断基準を理解して、自律的に判断できる機会も増える。

そうすると、ビジネスの推進スピードやメンバーの成長速度が速まっていく。

もちろん基準に当てはまらない例外的判断が必要なケースもあるが、
前提となる基準があれば、例外となる理由を説明することができる。
しかし判断基準がなければ、都度行きあたりばったりな判断になってしまい、
判断の精度が低くなることに加えて、メンバーに不安や不信感を与えてしまうだろう。

管理職自らが率先垂範し、同じ時間空間を体験する

判断基準を明確にすることは大切なのだが、明確な基準として言語化できない物事も、やはり多々ある。
そのような時は、管理職自身が判断が必要な事象に直接取り組んだ方が良い。いわゆる率先垂範だ。

特に人間関係のトラブル・部門同士のコンフリクトは、関係各位の価値観や感情が入り混じって
こじれているケースがほとんどなので、判断基準を事前に明確にすることは不可能だ。
対応方針として、

①双方の言い分を客観的に聞く
②双方の非を客観的に指摘し、認識させる
③双方の達成したいこと・あるべき姿を確認する
④望ましい行動や落とし所を決める

などは伝えられる。
ただし、最後の「落とし所を決める」が問題解決の肝となるが、この決め方は言語化が難しく、
教えることが大変むずかしい。したがって、基本的には都度判断になってしまうのだが、
判断プロセスを一緒に体験することで、同席者に判断基準や考え方を感じてもらう事はできる。

言語化できなくても、プロセスや同じ時間空間をともに体験することで、伝わるものもある。
マネージャーは正確で納得感のある判断をするために、さまざま工夫をしていくものだ。

また、時間をかければ良い判断ができる確率は高まるが、
できるだけ速く判断することも心がけたい。

メンバーが判断を仰ぎに来ているということは、
ほとんどの場合、その判断がなされないと仕事が進まないからである。
管理職がいたずらに判断に時間をかける・判断を保留すると、メンバーの仕事が止まってしまう。
管理職はチームで成果をだす役割なので、チームメンバーの仕事は止めてはならない。

部下の価値観理解に役立つ「欲求理論」

管理職が迅速で適切な判断・相談対応を行っていれば、基本的に業務は順調に進んでいくものだ。
しかし、メンバーのモチベーションに配慮していなければ、業務が滞ってしまうことも多い。

私たちの言動はすべて、自分の価値観から生み出されている。
大切にしている価値観が満たされる業務や時間であれば、誰もが能動的に業務を進めていく。
反対に、価値観が満たされない・価値観から遠い業務や時間は苦痛であり、モチベーションも下がる。


メンバーを丸ごと理解する重要性の記事でも伝えたが、メンバーの価値観理解は、
業務を安定的に進めていくためにも必要不可欠だ。

ただ一口に価値観と言っても千差万別であり、
何かしらの指針がないと、どのように理解していけば良いのか悩んでしまうと思う。

そこで「マクレランドの欲求理論」を紹介したい。
欲求理論とは、アメリカの心理学者デイビッド・C・マクレランドが提唱したモチベーション理論の一つで、
従業員には、達成欲求、権力欲求、親和欲求、回避欲求4つの欲求が存在する、という理論である。

本記事では、この理論に私が重要と考える承認欲求・探求欲求の2つを加えた6つをモチベーションの源泉とし、
概念も独自解釈としてお伝えする。

【1】達成欲求:前回よりもうまく、効率的にやりたい、という欲求
【2】権力欲求:影響力を行使して、他者に何か影響を与えたい、という欲求
【3】親和欲求:他者との友好な関係を作りたい、という欲求
【4】回避欲求:失敗や困難な状況を回避したい、という欲求
【5】探求欲求:物事を深く・正確に・体系的に理解したい、という欲求
【6】承認欲求:他者から称賛されたい・承認されたい 

デイビッド・C・マクレランドの欲求理論を、筆者の業務経験をもとに加筆・修正

私はモチベーションの源泉を変えることは難しいと考えている。
したがって自己やメンバーの欲求分布を把握し、適切なアサインメントや動機づけを考える必要がある。
モチベーションの源泉は良し悪しではなく特徴。誰もが複数の欲求を複合的に持っているため、
何を、どうすると、どの欲求を、どの程度満たせそうか?を考えてアサイメントや動機づけを行うと、
有効になる事が多い。

ちなみに私には6つの欲求すべてが存在していると感じるが、達成欲求と権力欲求あたりが強めだと思う。
欲求理論の視点は、メンバーだけでなく自分を理解し、自分を動かす視点としても活用できる。


適切な判断と動機づけを行って、メンバーの業務を止めずに、目標達成を支援する。
マネジメントの基本だが、非常に重要な役割だと思う。

それではまた。

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執筆者

中野 崇のアバター 中野 崇 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

・法人向け:新規事業開発と組織開発の伴走型・自立支援型コンサルティング
・個人向け:自分らしいキャリアデザイン支援(コーチング)
・モットー:家事育児、ときどきビジネスデザイナー
・抽象概念と具体的施策の間をつなぐ実践知の体系化が得意
・好きな漫画:「うしおととら」「キングダム」「清く柔く」 など

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