本記事では、ビジネスプロデューサーの3つ目のコアスキルである「柔軟な思考力」のうち、
論理優位型である「ロジカルシンキング」について解説したいと思う。
ビジネスプロデューサーのコアスキル ③柔軟な思考力
=「ロジカルシンキング」×想像力
現代のビジネス課題は複雑なので答えを見つけるのが難しく、さらに課題自体が変わり続けるため、
自分たちで最適解を考え、柔軟に変化に適応していくことが重要となる。
変化に適応するという行動を起こす前に、まずは思考を変える必要があるため、
柔軟な思考力を持つこと重要になるわけだ。
柔軟な思考力は、論理的に考える力であるロジカルシンキング(論理優位型)と、
相手の状況や感情を想像する力(情理優位型)で構成される。
ロジカルシンキング(論理優位型)
ロジカルシンキングは、皆さんご存知の「論理的思考」のことだ。
主観や直感に頼るのではなく、客観的に・体系的に・筋道立てて物事を考える思考法である。
ロジカルシンキングは客観性を担保するために、数字や事実(ファクト)を活用した分析を行って、
物事を体系化・構造化して理解を深めていく思考法なので、分析力や構造化力などと合わせて
語られるスキルでもある。
分析・構造化まではいかなくとも、物事を論理的に考えるよう努めることや、
論理的であるかを意識しながら話を聞く・文章を読むことも重要であり、
そのような意味では誰でも手にすることができるスキルだ。
ビジネス上のコミュニケーションでは、ロジカルシンキングが必要でない場面を探す方が難しい。
特に、新事業開発・DX推進のように多様なメンバーで仕事をするプロジェクトや、
はじめて一緒に仕事をするメンバーが多い業務においては、より重要度が高まるスキルだ。
というのも、私たちは誰でも自分が生まれ育った環境や歩んできた職業人生から、
生活とはこのようなものだ・仕事とはこのようなものだという、自分なりの価値観や常識をもっている。
過去に自分と似たような生活・仕事をしていれば価値観や常識は似通ってくるが、
自分とまったく違う生活・仕事をしていれば価値観や常識は大きく異なるもの。
文章にすると当たり前としか感じないことだが、普段から似たような価値観・常識の人だけと付き合っていると、
いつのまにか「この価値観・常識が正解なのだ」と無意識に思い込んでしまう状態になる。
これを無意識バイアス(アンコンシャス・バイアス)と言う。
アンコンシャス・バイアスをロジカルシンキングで解決する
アンコンシャス・バイアスについては、
守屋智敬氏の『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない』に詳しいので、
興味のある方は参考にして欲しい。
アンコンシャス・バイアスは「無意識の偏見」「無意識の思い込み」「無意識の偏ったものの見方」の
ような意味だが、グーグルが、「アンコンシャス・バイアス」と名づけた社員教育活動を始めたことで
一躍、有名になった言葉でもある。
いま改めてこの概念が注目されているのは、ビジネスにおいて多様性が重要になっているからだ。
新規事業開発やDX推進という多様な専門家が集まるプロジェクトに取り組む企業が増えていること、
正社員・派遣社員・フリーランス・時短勤務など働き方が多様化していること等が代表例だ。
無意識バイアスをもっていると、
自分と異なる価値観・常識に直面したときに「それは間違っている」と反射的に否定や拒絶をしてしまう。
物事の捉え方や考え方が「違うだけ」にも関わらず、それを「正誤問題」として対応してしまうのだ。
このようなリスクは、性別・年代・国籍という違いだけでなく、伝統的な製造業界とスタートアップ、
営業職とデザイナー職などさまざま所で日常的に発生している。
<身近にあるアンコンシャス・バイアスの例>
https://www.jtuc-rengo.or.jp/action/diversity/より一部抜粋して引用
・こどもが病気になったときは母親が休んだほうがいいと思う
・定時で帰る人は、やる気がないと思う
・介護しながら働くのは難しいと思う
・「普通は〇〇だ」「それって常識だ」と思うことがある など
それぞれが「自分が正しい」と考えて主張しあえば合意は遠のき、
摩擦・衝突・断絶の温床になることは想像いただけると思う。
そのような時こそ客観的で体系的なロジック(論理)が有効になる。
数字や事実(ファクト)に基づいた現状分析から論理展開がなされていれば、
それぞれが自分自身の価値観・常識からいったん離れて客観的に思考できるようになります。
たとえば誰かが、
「最近の新卒はゆとり教育で育ったから我慢が足りずすぐ辞めてしまう」という意見を述べたとして、
特に違和感を持たずに同意してしまったならば、そこには無意識バイアスが存在している。
厚生労働省が公表している「新規学卒者の離職状況」で離職率の状況を確認してみよう。
データを見ると、新規大卒者が3年以内に離職する率はここ20年くらい約3割で推移しており、
平成12年~18年頃と比べるとむしろやや減少している傾向が伺える。
こうした事実をもとに「3年以内の”離職率”に大きな変化はないが、世の中に転職サービスが増えているので
”転職意向”は高まっていると考えられ、それがすぐに辞めてしまう印象につながっているのかもしれない」
このような論理展開ができれば、相手が無意識バイアスをもっていても合意形成できる確率は高まる。
ただし、このような数字やファクトが都合よく得られない場合もあるし、考慮すべき点が多すぎて
論理的に整理するのが難しすぎる時もある。むしろ、そのようなケースの方が多い。
そもそも、複雑な現実の問題変数をすべて出しきって的確に構造化するのは非現実的であり、
人間の価値観・感情のような数値化・構造化が難しい変数が複雑に絡まっている状況においては、
ロジカルシンキングだけでは限界がある。そのような時に活用したいのが「想像力」だ。
想像力についての解説は、次の記事を参照して欲しい。
それではまた。