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【ビジネスプロデューサー⑥】#3 柔軟な思考力>想像力

本記事では、ビジネスプロデューサーの3つ目のコアスキルである「柔軟な思考力」のうち、
情理優位型である「想像力」について解説したいと思う。

目次

ビジネスプロデューサーのコアスキル #3 柔軟な思考力
=「ロジカルシンキング」×「想像力」

前回の記事で、柔軟な思考力は論理的に考える力であるロジカルシンキング(論理優位型)と、
相手の状況や感情を想像する力(情理優位型)で構成されるとお伝えした。
本記事では、論理・ロジックではなく、相手の感情を想像すること・相手の感情を考えることの
重要性を考えていきたい。

想像力(情理優位型)=柔軟に想像する力

想像力とは、
「他人の状況や感情・未来・現実には存在しないことなど、自分が経験していない物事を思い描く力」だ。

自分が経験していることであれば、その経験から得られた知識や学びを起点に考えることができる。
経験値や知識が蓄積されるほど、考えられる範囲は大きくなるという事は前述の通りだ。
そうはいっても、個人の経験・知識には限界があるので、
経験していないことを思い描ける「想像力」が重要になる。

また、論理では説明しきれない状況でも想像力は大いに役に立つ。
たとえば次のようなシーンで考えてみよう。

・20代女性メンバーの元気が無いので何かしら力になってあげたい(でも自分は男性40代)
・後輩からキャリアについての相談を受けたので良いアドバイスをしたい(でも自分は転職経験がない)
・議論の当事者たちが、お互いに支離滅裂な言い合いを感情的にしている(あぁ困った、どうしよう)

いずれもロジカルシンキングで対処しきれないケースだが、日常的に起こっている出来事だと思う。
自分に知識・経験が無いと、何を・どうサポートすればよいのかわからず、
思考停止してしまうかもしれないが、想像力を働かせてみよう。

20代女性メンバーの件は、確かに自分とは年齢も性別も、そして時代背景も違うので気持ちを想像するのは
難しいものだが、「そのメンバーの事が何もわからない」という事はないはずだ。
業務内容・労働時間・社内での交友関係・入社動機など、本人や周囲に確認して得られる情報を頼りに
「なんで元気が無いのだろうか?」「今はどのような気持ちなのだろうか?」のように、
相手が「どのような状況に置かれていて、何を考えているのか、どう感じているのか」を想像してみる。

ポイントは、自分だったらこのように考える・感じるのように自分の価値観を基準にするのではなく、
「あくまで相手の価値観を基準にすること」だ。

ここを誤解している人は多いので注意が必要だ。
想像力は相手の立場になって相手になりきって考える、と言い換えても良いだろう。

自分だったらこうするという自分本位の想像は、
価値観が違う相手には通じないだけでなく、かえって不快感を与えてしまう事さえある。
繰り言だが、あくまで相手の価値観や思考特性を基準にして想像することが重要だ。

ステークホルダーの立場・心情を想像する

あらゆる物事には多くの関係者がいて、それぞれが何らかの立場でビジネスを推進している。
職位ならば経営者・部長・課長・一般社員、
職種ならばコンサルタント・デザイナー・エンジニア・プロジェクトマネージャー、
受発注の関係では顧客・営業担当・下請けなど、立場は無数にある。

効率的に利益を増やしたいと考える経営者と、少ない労働時間で高い給与を貰いたいと考える社員。
良いものを安く購入したい顧客と、自社商品を少しでも高く買って貰いたい営業担当。
自分の任期中には大きな改革をしたくない部長と、新しい改革や挑戦をどんどん推進したい若手と、
その間に挟まれてどっちつかずの主張をする課長。

実際のビジネスシーンでは、立場によって成し遂げたいことが根本的に矛盾することは往々にしてある。
「新しい改革や挑戦はすべきであって、それを推進しないのは間違っている」と若手が断言するのは
短絡的だし、その意見を主張しても物事は進まない。
任期があと1年の部長にとって、仕掛りとなる大規模改革は最後までやり切れないから着手したくない
のかもしれないし、単に面倒くさいだけかもしれない。

重要なのは、
「新しい改革や挑戦はすべきであって、それを推進しないのは間違っている」で思考を止めないこと。
部長の状況や気持ちに着目して、
「なぜやりたく無いと思っているのか?」「どうしたらYesと言って貰えそうなのか?」を想像することだ。

部長が乗り気にならないのが、任期中に最後までやり切れないのが申し訳ないという責任感が理由ならば、
改革プロジェクトをフェーズ化して、あるフェーズまでやり切る事を提案すれば納得するかもしれない。
面倒くさいと思っているならば、お手を煩わせないことを丁寧に説明すれば良い。

課長の立場に対しても同様で、どっちつかずなスタンスでいる理由が、
部長と若手それぞれの要望を両立させる解決策を本気で実現したいと思っているからなのか、
あるいは改革には無関心でどちらでも良いと思っているからなのかなど、可能性は色々と考えられる。
何が正解かは当人しかわからないが、想像することで打ち手は何かしら見えてくるものだ。

ちなみに、想像することは共感することとは違う。
相手の価値観や考えに共感(感情的に寄り添うこと)できなくても、
想像できれば、発生している問題に対処できるし、コミュニケーションが取りやすくなる。

また、物事・事象を論理的に理解しきれていなくても、相手の状況・感情を想像して働きかけを
行っていれば、人や物事は良い方向に動きだしていきます。

反対に、物事を論理的に多面的にとらえ的確な施策を提案しているにも関わらず、
ビジネスが進んでいかないような時は、論理ではなく、情理(感情)に課題が残っているもの。

情理とは人情・事情・道理のこと。人情は自然に備わっている人間の感情であり、
事情はそうなるに至った個々人の経緯や理由、道理とは物事はかくあるべきと人が考えるすじみちである。

論理が通っていても、情理が通っていなければ人は動かないのだ。

柔軟で、しなやかな心と頭を持つ

ロジカルに考える力も、相手の状況や心情を想像する力も柔軟でなければいけません。
一度理解した内容が「これはこうすべきだ」「彼・彼女はこう感じるに決まっている」と固定観念になって、
しまったらむしろマイナスだ。世の中も人間も変わり続けている。
大きな変化もあれば小さな変化もあるが、変わらないものなどない。

自分の認識や理解が常に的確に物事や相手をとらえているか?という健全な猜疑心をもちつつ、
柔軟に・しなやかに考えを変化させていける力、すなわち柔軟な思考力を身につけていこう。

ビジネスプロデューサーが柔軟な思考力を身に着けていれば、
仮に大きな事業環境の変化・チーム編成の変化が発生しても、
そのプロジェクトやチームは変化に適応して進んでいけるはずだ。

それではまた。

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執筆者

中野 崇のアバター 中野 崇 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

・法人向け:新規事業開発と組織開発の伴走型・自立支援型コンサルティング
・個人向け:自分らしいキャリアデザイン支援(コーチング)
・モットー:家事育児、ときどきビジネスデザイナー
・抽象概念と具体的施策の間をつなぐ実践知の体系化が得意
・好きな漫画:「うしおととら」「キングダム」「清く柔く」 など

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