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【ビジネスプロデューサー⑦】#4 チームビルディング力>内省力

これまでにお伝えした、行動力・重層的な知識・柔軟な思考力は、
ビジネスプロデューサーの足腰とも言える基礎スキルだ。
一定の基礎スキルが身についたら、次はチームで成果をだせるスキル習得へと進んでいく。

目次

ビジネスプロデューサーのコアスキル #4 チームビルディング力
内省力×共感・傾聴力

一部の仕事を除けば、ほとんどの仕事はチームで遂行する。
そして複雑な問題や難しいミッションほど、編成されるチーム人数は増えていくため、
難しい問題解決や大きな成果を生むためには、
チームのパフォーマンスを最大化させるスキル=チームビルディング力が必要になる。

チームビルディングの肝は相互理解である。
そして、相互理解を実現するためにやるべき事は、内省して自分を理解すること(論理優位型)と、
共感・傾聴して他者やチームを理解すること(情理優位型)だ。

相互理解という言葉を聞くと、まず相手を理解することを意識する人がほとんどだと思うが、
まずやるべきは自己理解だ。
自分を正確に理解しているからこそ自分と他者の違いを明確に理解でき、
チームとしてどのように補完しあうべきかを判断することができる。

自己理解・他者理解の視点は「Will/Can/Know + Personality」をオススメしている。
Willはやりたい事や意志をもっている事、
Canはできる事・得意な事、Knowは知っている事・経験した事、
Personalityは性格や価値観だ。

自分と他者、そして最終的にはチームのWill/Can/Know + Personalityを的確に理解できれば、
チームのパフォーマンを最大化させる道筋が見えてくる。

内省力(論理優位型)とは

突然ですが、次の質問についてあなたは即答する事ができるだろうか?

1・あなたが仕事上で大切にしている価値観は何ですか?(Personality)
2・あなたが現在勤めている会社で達成したいことは何ですか?(Will)
3・あなたのビジネスパーソンとしての強み・弱みは何ですか?(Can)
4・あなたが知見をもっているテーマは何ですか?(Know)

あるいは、あなたが明日からDX新規事業企画のプロジェクトに参画すると仮定したときに
次の質問について回答できるだろうか?

5・プロジェクトへの期待や不安は何ですか?(Personality)
6・プロジェクトで達成したいことは何ですか?(Will)
7・あなたのプロジェクトにおける役割は何だと理解していますか?(Can)
8・あなたがプロジェクトに提供できる知見は何ですか?(Know)

前半4つはビジネスパーソンとしての質問で、後半4つはプロジェクトメンバーとしての質問だが、
いずれもWill/Can/Know+Personalityに根ざした質問である。
ビジネスパーソンとしての自分のWill/Can/Know + Personalityを理解していれば、
プロジェクトへの関与方法も明確にしやすいのだが、そもそもそれが曖昧だとプロジェクトへの
関与方法も曖昧になってしまう。

関与方法や役割が曖昧な状態では、人は100%の力を発揮できない。
したがってまずは、自分のWill/Can/Know + Personalityを理解することが大切であり、
自分を振り返って自分を的確に理解する力が「内省力」である。

そして、良い振り返りには適切な「問い」を立てられることも合わせて重要だ。
たとえば「やりたい事は何か」「強みは何か」と直球で自問自答しても、
なかなか答えをだせない人は多いと思う。そんな時は少し変化球を用いて、違った切り口の問いを
立てて振り返ると発見があったりする。

適切な問いのバリエーションを持てているかどうかは、振り返りの質に大きな影響を与える。
以下にWill/Can/Know + Personalityを深めるための問いを紹介したいと思う。

Willを理解するための問い

・自分は社会にどのように貢献したいのだろうか?
・自分が仕事で達成したいこと、成し遂げたいことは何だろうか?
・自分がこれまでに夢中になった仕事は何だろうか?
・自分がこれまでに面白いと感じた仕事は何だろうか?

最初の2つの問いである「社会への貢献」「成し遂げたい事」をすらすらと答えられる人は少ないと思うし、
この問いはとても難しい。余談だが、多くの自己啓発系書籍では「やりたい事・達成したい事をやりなさい」
ということが語られるが、そもそもそれを見つける事が難しい。

やりたい事があるのに踏み出せない問題よりも、
やりたい事がみつからない・わからないという問題の方が難しいものだ。

かくいう私も、まだまだ曖昧な部分も多い。
しかし問いを少し簡単にして、
「自分がこれまでに夢中になった仕事はなんだろうか?」「自分が面白いと感じた仕事は何だろうか?」
とすれば考えられるようになる。その際の自分の状況・仕事内容・チームメンバーなど詳細を思いだしながら、
「夢中になれた理由や面白いと感じた理由」も一緒に考えてみよう。

夢中になれたこと・面白いと感じたことは必ずあなたの情熱・意志の琴線に触れているので、
自分のWill(情熱や意志)がどんな時に生まれるのかを理解する、大きな手がかりになる。

Canを理解するための問い

・自分の専門性は何だろうか?
・自分の強みや得意なことは何だろうか?
・これまでに高い評価を受けた仕事は何だろうか?
・これまでに経験してきた仕事は何だろうか?

こちらも最初の2つの問いである「自分の専門性」」「自分の強みや得意なこと」は回答が難しいと思う。
特にゼネラリストに近い職種の方々は、自分の専門性や強みの言語化が苦手な印象がある。

したがってここでも問いを少し簡単にして、「これまでに高い評価を受けた仕事は何だろうか?」を考えてみる。
会社員の方であれば四半期や半年ごとに目標設定を行い、その達成度に応じて昇給・昇格・賞与が決まる
評価制度に馴染みがあると思うが、社内で高い評価を受けた仕事・顧客から高い評価を受けた仕事を洗いだそう。
そして、高い評価を受けた理由も同時に考えていく。

もし高い評価をもらった事なんてない・・・と感じた方がいたとしても大丈夫。
その場合は「これまでに経験してきた仕事は何だろうか?」と自分の業務経験を洗い出してみよう。
そしてそれら業務の中で、「大きな努力や苦労がなくやれたもの」をピックアップして欲しい。

自分にとっては苦労なくやれる仕事でも、他人からすると大変な仕事というものはあり、
その仕事にはあなたが自然に身につけているスキル・強みが隠れているものだ。

たとえばメンバーの話を丁寧に聴く1on1が自然にできる人は傾聴スキル、
その人がいると会議の質が高まるならばファシリテーション力などが考えられる。

苦労なくやれる業務が探せなかった場合は
自分が成長したと感じること」や「多くの時間を割いた業務」を見つけて欲しい。

できない事ができるようになる事が成長であり、成長実感があるならば何かしらのスキルが高まっている。
また多くの時間を割いた業務にも成長の種・スキルアップの種が含まれている。
自分の業務経験を丁寧に・具体的に振り返ってあげるだけで、
自分が思っている以上に発見があるものだ。

自分を内省してWillやCanを見つける作業は、慣れていない人は難しく感じるかもしれない。
内省による自己分析は、ビジネスプロデューサーがチームビルディングをする際に不可欠だが、
自身の働き方・生き方を考える際にも役に立つため、非常に重要な時間だと思う。

以下に、手軽に自己分析できる資料をダウンロードできるようにしてあるので、
興味がある方は試しにやってみてもらいたい(資料は無料)。

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Knowを理解するための問い

・自分が人前でスピーチできる知識・知見は何だろうか?
・自分が人にアドバイスできる知識・知見は何だろうか?
・自分が詳しいと感じる知識・知見は何だろうか?
・自分が興味や関心がある分野はなんだろうか?

「人前でスピーチ」や「人にアドバイス」は他者に対して語れる水準なので難易度が高いものだが、
「自分が詳しいと感じる知見」であれば自己評価なので何かしら見つかると思う。
また「自分が興味・関心がある分野」は、
現時点では知見がないけれども学ぶ意欲がある分野=知見の種なので、必ず見つかるはずだ。

仮に自分の知識・知見が少なかったとしても、
「自分が知らないことを認識できていること」は非常に重要だ。
「自分が知らないこと」を認識していれば何かしら対処ができる。
しかし、知らないことを知らない(無知の無自覚)状態であれば知るための行動がうまれず、
知っている人材に支援を求めることもできない為、対策ができない。

無知の無自覚は非常に怖い状態なのだ。

自分のKnowを見つける過程では「知っていることと、知らないことを明確にすること」を心がけ欲しい

Personalityを理解するための問い

自分のWill/Can/Knowが理解できたら最後はPersonality(性格や価値観)の理解です。

性格や価値観は千差万別であり、一言二言で表現できるほど人間の性格は単純ではない。
さまざまな特徴や癖をもっているからこそ、人間の個性は味わい深いのだと思う。
それでも、業務上で必ず押さえておきたいのは「好き・嫌い」である

好き嫌いは自分の大切にしている価値観に深く根ざしている感情なので、
大切にしている価値観にポジティブな影響を与える人や物事は好きと感じるし、
反対にネガティブな影響を与える人や物事は嫌いと感じてしまう。
好き嫌いのコントロールは難しいのだ。

さまざまな価値観・好き/嫌いをもつ人とチームで仕事をする場合、
それぞれの違いを認め合うことが非常に大切になる。
悪気はなかったとしても、あなたが放った一言や振る舞いが、
誰かの価値観・好き嫌いを傷つけるリスクは常にあるのだ。

ちなみに私は、今やるべきと感じる仕事を丁寧に取り組むのは好きだが、
優先順位が低いと感じる仕事を、議論の余地なくタスク化されるのは嫌い、いや大嫌いだ。
好き/嫌いという言葉はやや強い感情を想起させるものなので、
しっくり来ない方は「好きなこと=嫌いじゃないこと」「嫌いなこと=苦手なこと」と表現を
変えて振り返っても良いと思う。

たとえば将来について考えるときも、「将来どうなっていたいですか?」よりも
「将来どうなっているのは嫌ですか?」と問われた方が考えやすい人は多いものだ。

いずれにしても、
ビジネスに感情を持ち込まないのではなく、感情や価値観を理解してうまく使いこなす事が大切なのだ。

以上が、Will/Can/Know+Personalityを理解するスキルとしての内省力だ。

自分で内省するだけでは自己理解が進まない場合は、
上司や同僚に率直に聞いてみる・仲の良い顧客や取引先に軽く印象をうかがってみるなど、
あなたの仕事ぶりを実際に目にしている人に質問してみよう。
自分が思っている以上に周囲はあなたの仕事ぶりを見ているものだ。

また本気で自己理解を深めたい方は、コーチングを受けることをお薦めする。
私も数年前から定期的にコーチングを受けているが、
良いコーチは相手の価値観や状態を丸ごと理解しようと関わってくれるため、
自分だけでは見つけられなかった価値観・不安・好き嫌い・モチベーションの源泉に気づかせてくれる。

他者からFeedbackをもらうのは少し怖いかもしれないが、
無知の無自覚に陥ることが何よりのリスクなので、ぜひ検討してもらいたい。

それではまた。

❏書籍紹介
ビジネスプロデューサーの仕事を、新規事業開発の企画プロセスと重ねて解説しています。
よろしければ手に取ってみてください。
>>『多彩なタレントを束ね プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事』

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執筆者

中野 崇のアバター 中野 崇 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

・法人向け:新規事業開発と組織開発の伴走型・自立支援型コンサルティング
・個人向け:自分らしいキャリアデザイン支援(コーチング)
・モットー:家事育児、ときどきビジネスデザイナー
・抽象概念と具体的施策の間をつなぐ実践知の体系化が得意
・好きな漫画:「うしおととら」「キングダム」「清く柔く」 など

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