さて、チームビルディングの第一歩である相互理解が進みチームで協働する基盤が整ったら、
改めてプロロジェクトや業務の「目的と目標」を確認していく。
当たり前だが、すべての業務・プロジェクトには目的・目標があります。
目的・目標を達成するために何が問題かを洗い出し、解決すべき課題を設定し、解決策を考えて、
それらを実行・具現化に向けてチームを方向づけしていくことになる。
ビジネスでは何かしらの問題が発生し続けるため、実は問題を見つけることはそう難しくない。
難しいのは、どの問題を解決するべきか選ぶ課題設定(論理優位型)と、
その課題を解決する方法を考える解決策の着想(情理優位型)である。
解決策が見つからない課題設定は意味がないため、課題設定と解決策の着想は常にセットで考える。
具体的な解決策が提示されないと、メンバーは何をすれば良いかわからず、ビジネスが動いていかない。
ビジネスプロデューサーのコアスキル #5 方向づける力
=課題設定力×解決策の着想力
それではまずは、課題設定力からお伝えしていきます。
経営や上級管理職ともなると課題設定は日常業務となるが、
多くのビジネスパーソンにとって課題は与えられることが多いかもしれない。
しかし、課題がそもそも検討違いであれば、どんなに良い解決策を考えても成果にはつながらない。
的確な課題設定を行うためには、ありたき姿と現状のギャップである問題が的確に分析されている
必要がある。課題設定力と現状分析力は表裏一体です。
現状分析をビジネスプロデューサーだけで行う事はあまりなく、
経営企画・事業企画などの社内企画部門や、社外の戦略コンサルタントにサポートしてもらうなど、
分析に長けた人材にサポートしてもらう事が多いはずだ。
また分析力は非常に奥深く、分析技術に特化した書籍も数多くあるので、
到底語り切ることができません(私の能力としても紙面の都合としても)。
したがってこの記事では、課題設定に必要な現状分析力の中でも、
特にビジネスプロデューサーに習熟して貰いたいスキルについて触れていきたいと思う。
現状分析は大雑把に言うと、
①問題発見→②課題設定→③解決策の立案となるが、
ビジネスは基本的に問題だらけなので問題発見はそれほど難しくなのは前述の通りだ。
重要なのは、
何かしらの基準をもっていま解決すべき問題がどれなのかを選び(=課題設定)、
その解決方法を考え出すこと。
私が重視している課題設定の基準はシンプルに「ビジネスインパクト×成果までの時間」である。
ビジネスインパクトは売上・利益に貢献する金額の大きさで、
成果までの時間は解決策実行後に成果が現れるまでの期間を指す。
たとえば直近半年の売上目標達成率が90%の事業でテコ入れが必要だったときに、課題として、
①営業力が弱いので、営業組織の地力を高める
②社員のモチベーションが全体的に低いので、働きがいを高める
③商品の競争優位性が低いので、新商品をつくるの3つを挙げたとする。
実際によくある課題設定だと思うが、この3つの課題はいずれも解決して成果を生むまでに時間がかかる。
中長期的には取り組むべき課題だが、半年~1年後に一定の売上増加を実現することが目標だった場合、
どの施策を行っても成果が間に合わないため、課題設定が不適切という事になる。
非常に単純化した例ではあるが、目的・目標達成のためにビジネスインパクト×成果までの時間を
考慮した課題設定は案外なされていないものだ。
また、課題設定の精度を高めるために留意すべきは「問題の粒度」だ。
粒度とはつぶの大きさの事だが、
現状分析で問題をどこまで細分化するのが最適か(どこまでつぶを小さくするべきか)の検討も重要である。
先に挙げた売上不調の3つの課題は非常に粒度が大きい課題だったが、
現状分析で抽出された問題の粒度が大きければ、必然的に課題設定の粒度も大きくなる。
たとえば前述の例示を(課題ではなく)問題に戻して、さらに問題を細分化していくと次のようになる。
●問題①:営業力が弱い
要因a.営業の商談数が減っている
要因b.営業の人員数が競合よりも少なくなっている
要因c.営業が販売する商品が増えて、商品知識の理解が追いついていない
●問題②:社員のモチベーションが全体的に低い
要因a.残業時間が全部門で増えている
要因b.リモートワークを導入できていない部署のモチベーションが特に低い
要因c.キーパーソンの離職が続いて士気が低下している
●問題③:商品の競争優位性が低い
要因a.稼ぎ頭だった商品Aの市場に手強い競合商品が投入された
要因b.原価高騰を受けて値上げをしたら、競合より割高感がでてしまった
要因c.すべての新商品が常に後発で新しい付加価値も少ない
問題ごとに要因を3つ挙げているが、各要因はそれぞれ細分化された問題であり課題の候補である。
図:課題設定と解決策を見ていただくとわかるが、どの問題を課題として設定するかによって
解決策は全く異なるものになる。
このように現状分析で問題を洗い出して要因に細分化し、
ビジネスインパクトと成果までの時間を考慮して課題設定を行なうことで、
短期・中期・長期それぞれで解決策が実行されるのでビジネスの目的・目標が達成されやすくなる。
ただし、全方位的に「全部やる」という意思決定は絶対にやってはいけない。
目に見えている問題を全部解決できる余力・スキルを持っている会社などない。
課題設定は、絞り込むことが物凄く大切である。
繰り言になるが、この課題設定の精度が低いとどんなに良い解決策を考えたとしても成果が出ないため、
ビジネスプロデューサーは課題設定にはこだわって欲しい。
また会社や上司から与えられた課題設定に疑問をもった時は、
納得できるまで意見交換する・自らの分析結果をもとに課題設定の変更を提案するなど、
より良い課題設定がなされるよう能動的なアクションを行っていこう。
「間違った問題への正しい答えほど始末に負えないものはない」
こちらは経営学者であるピーター・ドラッカーの名言ですが、私も心から実感しています。
与えられた課題設定を鵜呑みにしない姿勢も重要である。
さて、課題設定は問題の洗い出しから始まるが、
そもそも問題を的確に洗い出せなければなりません。
対象を俯瞰してとらえて問題が発生しそうな箇所にあたりをつける必要がありますが、
その際に有効なのがフレームワークだ。市場分析のフレームワークとしては3C分析が
もっともシンプルで実用的だが、他にもPEST分析・VRIO分析・5F分析など有名な
フレームワークはいくつもある。ご存知の方も多いだろう。
ビジネスプロデューサーとしては、各フレームワークがどのような視点で・どのような分析を
行なうのかは知っておいて損はないが、すべてを使いこなせる必要は無いと思う。
ただし、3C分析だけは使いこなして貰いたい。
その中でも「Customer:顧客・市場」起点での問題発見・課題設定のスキルは、
専門性を身につけてもらいたい。
どのような仕事にも必ず顧客が存在し、さまざまな顧客がそれぞれの課題を抱えている。
提供する商品やサービスを通して、顧客が抱える課題の解決を行って、
価値を実感してもらうことでビジネスの目的・目標が達成されていく
あらゆるビジネスでは「誰の・どのような課題を解決するのか」が起点になる。
ビジネスプロデューサーは顧客への提供価値を最大化する役割を担うので、
チームの中で誰よりも客観的に・多面的に顧客課題をとらえている存在であるべきだと思う。
その為にもリサーチスキルの習得、とくにインタビュー設計力は重点的に身につける事をお薦めしたい。
次回以降はリサーチスキルについて深堀りしていこうと思う。
それではまた。