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【ビジネスプロデューサー⑭】#6 会議運営力 >会議設計力

チームで仕事を円滑に進めていく為には、適切なコミュニケーションが欠かせない。
また、スタート時点で目的・目標・課題設定・解決策などを合意できていても、
実行過程でさまざまは認識の齟齬・衝突(コンフリクト)・停滞などは必ず発生する。

このような状況を打開する、あるいは未然に防ぐためには会議運営力が有効だ。
ビジネスパーソンならば誰もが、日常的に会議を運営していると思うが、会議の質は千差万別。
ビジネスプロデューサーはプロジェクトやチームの先導者や触媒の役割を果たす為、
会議をリードする事も多い。質の高い会議運営力を習得することも必須である。

会議運営力は、いつ・誰と・どのような会議を行うかという会議設計力(論理優位型)と、
会議そのものの質を高めるファシリテーション力(情理優位型)で構成される。

会議設計が準備、ファシリテーションが実行とも言える。
会議運営力が高い人が仕切る会議は、議論も活性化し、会議後は何かしらビジネスが前進していく。
反対に、運営力が低い人が仕切る会議はビジネスが何も進展せず、むしろ疲労感やイライラを蓄積させる為、
デメリットしかない。

会議運営力は、ビジネス推進に決定的な影響を与える非常に重要なスキルなので、
スキルアップを疎かにしてはいけない。

目次

ビジネスプロデューサーのコアスキル #6 会議運営力
会議設計力×ファシリテーション力

まずは、会議実行の前段階である「会議設計(どのような会議を行うかの設計)」のポイントから。

<会議設計のポイント>
(主催側)
・会議の背景/目的を明確にする
・会議形態を決める
・会議オーナーを決める
・目的に合致したタイミングを決める
・目的に合致した最少人数を選ぶ
・アジェンダと時間配分を決める
・アジェンダや資料を出席者に事前共有する
・議事録フォーマットを決める

(参加側)
・会議に遅刻しない
・遅れるときは事前連絡する(何分遅れるのか明確に伝える)
・会議目的を事前に理解しておく
・共有されたアジェンダや資料に目を通しておく

当たり前のことばかりですね。どれも一度は見聞きした事がある内容だと思うが、
ビジネスの現場で、これらがしっかりと守られた会議を目にするのは非常に稀だ。
当たり前のことだが、必要性・重要性を腹から認識していなければ、
このような基本動作を業務上で徹底するのはとても難しいことだ。

さて、まずは主催側のポイントから補足してこうと思う。

会議設計のポイント(主催者側)

会議の背景を確認にする

すべての会議は何らかのビジネス目的・目標の達成につながっているため、
会議が実施された背景や目的・目標を明確にしよう。

まず背景は「なぜこのタイミング・このメンバーで会議を開催するのか」を確認する。
背景が不明な状態だと、そもそも前向き会議に参加してもらえない。

一方で、背景説明に時間を割きすぎると会議がだれるので、簡潔に説明することを心がけるます。
また、会議参加者の中でもアジェンダへの関与や知見が深い人・浅い人が混在するため、
同じ説明を行っても理解度には必ず差が生まれる。

その差が軽微ならば当日の背景説明でカバーできるのだが、
大きな差かつキーパーソンの理解不足が懸念される場合は、会議前に個別フォローを実施するのが得策だ。

この一手間を惜しんでしまうと、当日の会議がその1人への補足ばかりで時間切れになり、
肝心の議論が出来ないという事態が起きてしまう。

会議の目的を明確にする

次は会議目的だが、会議目的にもいろいろな種類があり適切な使い分けが重要だ。
会議目的によって、会議オーナー・会議形態・参加メンバーなど会議設計の内容は変わる。
代表的な会議目的は次の通り。

<主な会議目的>
●認識・理解の促進
●行動促進や支援獲得
●発散・議論
●合意形成・意思決定
●業務支援・成長支援
●相互理解・関係性構築
●相互学習・行動改善
●鼓舞・士気向上


①認識・理解の促進は、プロジェクトや業務の進捗状況・意思決定された事実などを認識・理解してもらう
ことが目的となる。発散や合意形成が目的ではないので、論理的で簡潔な伝え方が有効であり、
共有・報告という形で行われる。

②行動促進や支援獲得は、新しい挑戦・進行中プロジェクトなどに興味をもってもらい、
行動や支援をうながすことが目的。実際に時間を使って活動してもらう事になるので、
認識・理解促進以上に丁寧な説明が必要になり、対象部門の繁忙状況や意向に配慮した
コミュニケーションが重要となる。質疑応答の時間を長く確保する・Q&A集を準備するなど、
丁寧な説明と準備が会議の成果を左右する。

③発散・議論は、あるテーマに対して、新しいアイデアや改善案などをできるだけ多く集めることが目的。
一般形式でも議論の時間を多めにとるとか、ワークショップ形式でブレストなどを行うのが有効となる。

④合意形成・意思決定は、ビジネスの進め方・課題設定・解決策の内容・予算・人事異動など、
さまざまなビジネス課題について関係者で合意する・意思決定を行うことが目的。
何に合意したいのか・何を意思決定したいのかという論点整理や、意思決定に必要な材料の準備などが
重要になる。。参加者のインプットに差があるような場合は、事前に個別フォローを実施しておくと、
会議の質がグッと高まる。

⑤業務支援・成長支援は、主に上司から部下・先輩から後輩への育成が目的。
1on1・OJT・研修などさまざまな形態があるが、どれだけ個人に向き合った時間にできるかどうかが重要。
変わった形態としては1on2/1on3などもある。1on2/1on3は、私が代表取締役を務めていた頃に、
マネジメント層の成長支援を目的として活用していた会議形態。運営難易度は高めだが、限れられた時間を
有効活用できる形態だ。

⑥相互理解・関係性構築は、チームビルディングの記事でも詳述した相互理解を深めることが目的となる。
発散と同じようにワークショップ形式で実施する、通常の会議をいつもより意図的に和やかに・カジュアル
に設計すると良い結果が得られやすい。

⑦相互学習・行動改善は、プロジェクトの進捗・仕事の進め方・チームビルディング状況などを
チームで振り返り、成果や課題をお互いに学び合うことや行動の改善につなげることが目的である。
担当業務について個人で振り返ることも重要なのだが、すべての業務に関わっているわけではないため、
他者の学びを聞くことで新しい学びを得ることができる。

⑧鼓舞・士気向上は、聞き手のモチベーションや士気を高めることが目的。
全社MTGや表彰式などで、経営陣や上級管理職が大勢の社員や関係者に対してメッセージ発信する形態が多い。

ここで紹介した8つの会議目的は代表的なものだが、他にもさまざまな会議目的がありえる。
また、理解促進と支援獲得がセット、発散と合意形成がセットのように、複数の目的が混在する場合も多い。
時間の制約上、会議目的が混在するのは致し方ないのだが、目的を混在させると会議の難易度は高まり、
目的達成のリスクが高まることは認識しておこう。

また、主催者側の狙いとは裏腹に参加者側が自然発生的に発散を始める、交流の一環で雑談を始めることもある。
会議の目的が発散や相互理解ならばまったく構わないのだが、そうでない時は早めに軌道修正をする。
目的外の交流や発散は、当初の会議を早く終えてその後に関係者でするのが良い時間の使い方だと思う。
このような話をすると「ゆるい会話や雑談から新しいアイデアが生まれるのだ」という反論が聞こえてくるが、
経験から言わせてもらうと「その確率はゼロではないが高くない。むしろ低い」だ。

新しいアイデアが欲しい時は、その目的をもって別会議をした方がはるかに効率的だ。
もちろん、ゆるい会話や雑談は仲良くなるための近道ですからTPOが大事だということです。

会議形態を決める

会議目的によって適切な会議形態は変わるものだが、
会議目的が決まれば自ずと会議形態も決まるという事でもある。

会議目的と会議形態のよくある組み合わせをまとめておいたので、下図を参考にしてもらえればと思う。

会議目的×会議形態(執筆者作成)

会議オーナーを明確にする

会議の成果・品質に責任をもつ人が会議オーナーだが、オーナー不在(不明確)の会議は意外と多い。
主催している部署の誰か・司会進行者・参加者でもっとも上位の役職者など漠然とした共通認識はあるものの、
オーナーが明確になっていない。会議オーナーが明確になっていないので、
会議が紛糾する・ぐだぐだになる等の問題が発生した時に、能動的に対処や軌道修正を行う人が現れない。
現れたとしても「なぜ俺が仕切っているのだろう?」ともやもやを抱えていたりする。

オーナーが不在というのは責任の所在が不明確ということなので、
会議の質が高まらないのも当然と言える。会議が企画されたらまず、オーナーを誰にすべきかを決めておこう。

会議設計にあたっては、まず会議目的・会議形態・会議オーナーを決めることで、
いつ実施するべきかというタイミング・誰を参加させるべきかという人選とそれに伴うスケジュールが
決めやすくなる。そして、当日までにアジェンダ・時間配分・必要資料の準備を行っていく。

このような会議設計は、経営企画・事業企画など企画部門主体で行われることが多いため、
それ以外の部門の人は苦手だったり、そもそも会議設計の重要性を認識していなかったりするが、
多様性が高いチームや部門横断のプロジェクトを円滑に推進するために、会議設計力は必須だ。
ビジネスプロデューサーを目指していく方は、これまでの会議体のとらえ方をぜひ見直してもらいたい。

議事録フォーマットを決める

会議設計力で最後にお伝えするのは「議事録フォーマットを決める」ことだ。

議事録には大きく3つの目的があり、どの目的を重視するかによって必要な議事録フォーマットは変わってくる。

・目的①:会議での議論や決定事項を会議後に確認できる「会議の要約」
・目的②:会議の決定事項・合意内容・役割分担などが明示される「証跡」
・目的③:主に会議欠席者が、会議での会話内容を追体験できる「発言録」

もっとも多いのは「会議の要約」だ。

会議目的によって残すべき内容は変わるものの、
共通して記録すべきは「合意・決定事項」「継続検討事項」「宿題対応」である。

会議で行った質疑応答や議論を経て最終的に合意・意志決定に至った場合は、その内容を記録する。
反対に、合意・意思決定に至らなかった場合は、継続検討事項(未合意事項)として記録する。
また、会議後に検討やアクションが必要となる宿題が発生することも多いので、
宿題ごとに「誰が」「いつまでに」「何をするのか」を明確にして、記録する。

この宿題対応を曖昧にしていると、
業務が進まない・コミュニケーション齟齬が生まれるなどのリスクが大きくなるので注意しよう。

「証跡」は備忘録とほぼ同じ内容でカバーできますが、言った言っていない/聞いた聞いてない問題を
避けるためにも、会議出席者の名前や多数決における賛成/反対の顔ぶれなど、
誰が・どのような意思表明をしたのかを記録しておく。

このような情報を記録するのは重箱の隅をつつきたいわけではなく、
出席者に責任ある発言をうながす効果を狙っている。
ただし、全ての会議・全てのアジェンダでこれをやるのは無粋なので、
重要アジェンダに限定して記録するなどの配慮を行うと良い。

「発言録」はその名の通り、誰が・何を発言したのかをすべて記録したものだ。
議論のプロセス全体に価値があるような場合、備忘録だけだと内容が不十分なので、発言録を作成する。
ただし、リアルタイムで発言録をつくるのは非常に難しいため、
録音して会議後に文字起こしをする、オンラインMTGにして録画するという対応をとる。

よくあるミスコミニケーションは、
「会議の要約」と「発言録」のどちらが必要かを曖昧なまま議事録作成を依頼すること。
隙間時間で会議の要約を読みたかったにも関わらず、
発言録が作成されていたらキャッチアップが難しくなるし、その反対も然りだ。
会議ごとに適切な議事録フォーマットは何か?を会議オーナーが設計するようにしよう。

ビジネスプロデューサーは、自分が会議オーナーでなくとも、プロジェクトやチーム内で
このような会議設計がなされるよう、ディレクションを与えていって欲しい。

それではまた。

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