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【ビジネスプロデューサー⑬】#5 方向づける力 >解決策の着想力

解決策の着想力はその名の通り「解決策を思いつける力」だ。
課題設定ができても解決策が思いつかなければ実行に移れず、いつまで経っても課題は解決されない。
着想力を高めるためにまず個人でやるべきことは「重層的な知識」と「柔軟な思考力」を高めること。

思いつけるかどうかは頭の中にどれだけ知識が蓄積されていて、
どれだけ柔軟にそれらを取り出せるか・組み合わせられるか・発展させられるかという思考力で決まる。

そして最も知識を蓄積できるのが行動・経験である。
解決策の着想力を高めたければ、さまざまな経験を積む×さまざまな物事を学ぶ×自分の頭でちゃんと考える、
という習慣をつくる事が重要となる。

この辺りはビジネスプロデューサーのコアスキル#1-3で解説しているので、
興味がある方は参考にして欲しい。

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目次

ビジネスプロデューサーのコアスキル #5 方向づける力
課題設定力×解決策の着想力

とはいっても、目の前に解決策を出さねばならない課題はいくつもある為、
そのような時はチームで着想力を高める工夫が必要になる。最善策は着想力がある人を連れてくること。
どんな会社にもアイデアマンとして名が通っている人が社内に1人2人はいるものだ。

着想力がある人は、当該業務の経験有無に関わらず、関連するインプットが入ると驚くほど速く
解決策を思いついてくれるものだ。しかし、そのような人が周囲にいるとは限らないので、
チームでさまざまな知識・体験を担保する工夫が必要になる。

多様性で着想力を高める

お察しいただけたかもしれないが、鍵は「多様性」だ。
同質性が高いチームでは思いつかないアイデアも、多様性あるチームがさまざまな観点からブレストを
行うことで必ず何らかの解決策や、解決策の種が生まれてくる。

解決策が見つからなくて困っているならば、それはチームが保有している知識・経験の幅が足りないからだ。
ビジネスプロデューサーはそのような状況を打開するために、どのような知識・経験をもっている人が
必要なのかを見極め、そのような人材を実際に連れてくる調達機能も担っている。
チームにいくつかの解決策が生まれたら、
その解決策が火種となってメンバーからもさまざまなアイデアが出るようになっていくものだが、
ビジネスプロデューサーが火種と導火線を準備することが前提になる。

リモートワークが一般的になった事で、ブレストやワークショップもオンラインで実施する機会が増えた。
ただ、MTGルームで顔を合わせながらわいわい・がやがやとブレストしていた時と比べると、
場が活性化しにくい・アイデアの出が悪いと感じるときがある。チームの創造性が低下している感覚だ。

やはりオンラインでは顔や上半身しか映らないし、画像の解像度や画面オフなども相まって、
表情・身振り手振り・仕草・まとっている雰囲気・同じ場を共有している感覚などが削られてしまう。
その時間で得られるインプット量が大きく減ってしまうのだ。

しかし、オンラインはブレストやワークショップの運営効率を考えるとメリットも大きいもの。
そこで活躍するのが、創造性と効率性を両立できるオンラインホワイトボードツールである。
オンラインホワイトボードを活用すれば、ホワイトボードや模造紙に付箋を貼る形式で行っていた
ブレストやKJ法を、すべてオンラインで完結することができる。

最近、知名度が上がってきているのでご存知の方も多いと思うが、
私がよく使っているのはmiro(https://miro.com/)というものだ。
一度、どのような事ができるかを体験してみることをオススメしたい。

良い問いを立てることが着想につながる

チームで着想力を高めるためには、良い問いを立てられることも重要である。

チームに多様性が担保されていても、
メンバーの知見が有効に引き出される問いが設定されていないと、解決策のアイデアは生まれてこない。

良い問いを立てる力は、蓄積された知見の量に比例する部分も大きいのだが、
いわゆる発想法を活用することで短期的に対処することは可能だ。
発想法として有名なのはオズボーンのチェックリストだろう。

オズボーンのチェックリストは、ブレスト(ブレインストーミング法)の発案者でもある
アレックス・F・オズボーン氏が考案したもので、
以下にあげる9つの視点で物事を考えると新しいアイデアや仮説が生まれやすくなる、というものだ。

<オズボーンのチェックリスト>
1.転用:新しい使い方はないか?
2.応用:他からアイデアを借りられないか?
3.変更:意味、色、働き、音、匂い、様式、型を変えられないか?
4.拡大:より大きくできないか?何か追加できないか?
5.縮小:より小さくできないか?何か省略できないか?
6.代用:ほかのもので代用できないか? 
7.置換:要素を入れ替えてみたらどうか?
8.逆転:上下・前後・内外などを逆にして見たらどうか?
9.結合:組み合わせたらどうか?

これら9つの視点を文章にすると小難しく感じますが、
身近な事例に置き換えるととても応用しやすい視点であることが理解できる。

たとえば、灰皿やお椀をアクセサリー入れに使うアイデアは「転用」になるし、
ミシンを裁縫器具ではなく親子のコミュニケーションツールと位置づけた事例は「意味の変更」だ。
メルカリは、路上で行われていたフリーマッケットをデジタルに「代用」して進化させたものと言えるし、
電子署名は印鑑・名刺管理アプリのEight(エイト)は名刺のそれぞれ代用になる。
プロジェクションマッピングは、建物などの立体物×映像投影の「結合」と解釈することができる。

このような事例とともに、ある課題に対して1~9までを順番にアイデア出し(アイディエーション)を
行なうことでチームの着想力を高めることは可能だ。

また、チームでアイディエーションを行なう際は、漫然と行っても良い成果にはつながらない。
最低限、以下の4つのルールを守ることも大切だ。

<アイディエーションを機能させる4つのルール>
ルール①:判断をしない。特に批判は厳禁
自由な発想を制限するような判断、特に批判はしない。
とにかく自由なアイデアを得ることが最大の目的なので、それを阻害するような
判断・批判はしてはいけない。
ありがちなのは「予算が無いから出来ないね」という判断ですが、止めましょう。

ルール②:すべてのアイデアを歓迎する
ブレストの場ではアイデアに優劣は無いと考える。
奇抜で斬新なアイデア、論点がズレているかもしれないアイデア、新しさを感じないアイデア、
アイデアになっていない想いなど、とにかくすべてアイデアを歓迎すること。
この時に「それもいいねぇ」と相槌を打つと場が温まっていく。心がけましょう。

ルール③:とにかく量を重視する
考え抜かれている必要はありません。
とにかく、できるだけ多くのアイデアをだすことが重要。

ルール④:アイデアを結合して進化させる(結合改善)
アイデア同士をつなげたり、アイデアを部分的に変化させたりすることで、
さらに新しいアイデアをつくっていくという事を、参加メンバーが意識する。
他人の意見に「もっとこうしたらどう?」「これもありじゃない?」と
便乗することはむしろ推奨される。

着想力はアイディエーションの回数をこなす程に高まっていく。
解決策の着想力を高めるためには、
知見の蓄積というインプットと、アイデアをだすというアウトプットの両輪を回していくことが重要なのだ。


さて、数回に渡って「方向づける力」を構成するスキルについて言及してきた。
改めて方向づける力を要約すると、どの問題を解決するべきか選ぶ課題設定力(論理優位型)と
解決策を着想する力(情理優位型)が統合されたスキル、という事になる。
そして、課題設定・解決策の着想の起点になるのが、顧客課題をとらえるリサーチ・分析スキルだ。

課題設定と解決策の着想は常にセットで考え、解決策の実行に向けてチームを方向づけしていこう。

それではまた。

❏書籍紹介
ビジネスプロデューサーの仕事を、新規事業開発の企画プロセスと重ねて解説しています。
よろしければ手に取ってみてください。
>>『多彩なタレントを束ね プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事』

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執筆者

中野 崇のアバター 中野 崇 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

・法人向け:新規事業開発と組織開発の伴走型・自立支援型コンサルティング
・個人向け:自分らしいキャリアデザイン支援(コーチング)
・モットー:家事育児、ときどきビジネスデザイナー
・抽象概念と具体的施策の間をつなぐ実践知の体系化が得意
・好きな漫画:「うしおととら」「キングダム」「清く柔く」 など

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