MENU

【新規事業開発の企画①】まずは新規事業企画のアプローチを理解しよう

新規事業開発やDX推進に限らず、新しい価値創造の出発点は良い企画が必要だ。
企画の精度が低く的や照準がずれていると、その後の工程すべての品質が下がり、
結果的に事業として十分な売上をつくる事ができない。
良い企画が成功確率の高い価値創造につながる。

価値は「顧客が抱えている課題が解決することで、顧客が受け取るポジティブな変化」であり、
ビジネスプロデューサーは顧客への提供価値を最大化する責任者であり伴走者なので、
顧客課題起点でDX新規事業企画を進めるアプローチを理解しておく必要がある。
DX新規事業=システム開発を伴う新規事業、アプローチ=物事の進め方・深め方だ。

顧客課題起点で考えるDX新規事業の企画アプローチを概観すると、ざっと以下のようになる。

目次

DX新規事業の企画アプローチ

・Why:なぜやるのか(目的)
・Will:本当にやりたいか(意志)
・When:いつやるか(時期)
・Who:誰の・どのような課題を解決するのか
・What:どのような価値・ソリューションで解決するのか
・How:どのように提供し続けるのか

WhyはDX新規事業の目的、Willはその目的達成への意志、Whenは始める時期・世の中に生みだす時期だ。
まずは目的・意志・時期を確認する。その後にWho(誰の・どのような課題を解決するのか)を考えていくが、
Whoはさらに「顧客課題の発見と設定」「市場分析/ターゲット策定」の2つにわけられる。

Whoの次はWhat(どのような価値・ソリューションで解決するのか)を考えるが、
Whatも「独自価値とソリューション設計」「UXデザイン&プロトタイピング」にわけられる。

Whatの次がHow(どのように提供し続けるのか)であり、
Howも「ビジネスモデル仮説の構築」「ビジネスモデル仮説の検証」の2つにわけられる。

そして、並行して「ステークホルダー分析と適切な巻き込み」「Pitch Deck作成」
「チームビルディング」を実行していく。

これら一連の視点・要点をまとめたものが次の図だ。

DX新規事業企画のアプローチ詳細(執筆者作成)

それでは以降から、各ステップで考えるべき内容の詳細をお伝えしたいと思う。

チームビルディング

DX新規事業の企画が必要になった場合、ほとんどの場合は数名のチームで動くことになる。
チームは組織化されることもあれば、プロジェクトとして始動することもある。

DX新規事業に限った話ではないが、チームで業務を進める際にまずやるべきはチームビルディングだ。
お互いの経歴・価値観・プロジェクトにかける意気込みなど、業務上で必要になる情報交換だけでなく、
趣味・家族構成などパーソナリティを感じられる会話をすると、関係性構築がスムーズになる。
反対に、相性が悪そうな部分などを事前に想定できれば対処方法を予め考えることもできたりする。

最初に「プロジェクト名」や「お互いの呼び方(ニックネーム)」などを決めておくのも良いアイデアだ。
たとえば私が過去に関わったプロジェクトでは 「Hornet(雀蜂のように鋭い一撃のような企画をつくろう)」
「Submarine(潜水艦のように深く潜って考え抜こう)」などがあったが、基本的には何でも大丈夫だ。
メンバーが口ずさみやすかったり、士気があがるようなネーミングが良いと思う。

チームビルディングは最初に行うものだが、最初にやって終わりではない。
プロジェクトが続く限り継続的にメンテナンスし、関係性を深化させていく必要がある。
チーム状態は夫婦関係や家族関係と同じで、油断してコミュニケーションを疎かにすると、
知らぬ間にほころびや摩擦が生じるもの。
最初から最後まで目配り・気配り・心配りを忘れずにコミュニケーションをとっていこう。

Whyの確認

初期的チームビルディングが終わったら次はWhy(DX新規事業をなぜやるのか)という目的を確認する。
目的は「新規事業で10年後の新しい売上の柱をつくりたい」「社内に挑戦こそが価値だと強く訴えたい」
「新しい事業をつくる機会があることを社外にアピールしたい」「事業開発の経験値を蓄積したい」など、
さまざまあるだろう。複数目的が合わさっていることもある。

主たる目的が何かをプロジェクトオーナー(プロジェクトの最終意思決定者)に確認しよう。
「先に挙げた全部が目的だ」と言われた場合は、主目的が何かを一緒に明確にしておきたい。

たとえば、10年後の売上の柱をつくるくらいの本気度ならば、必要なチームメンバーや予算などを
しっかり要求しなければならないし、社外アピールが目的ならばとにかくスピードが重要だったりする。
目的によってプロジェクトアプローチは変わるものだ。

どのような目的であれDX新規事業は、ビジネスオーナー(多くの場合は経営陣)が意志をもっていなければ
大成せず、組織やプロジェクトの継続が危ぶまれる。

最初の段階で目的を確認してオーナーと握っておくことが重要である。
なお、目的以外で確認すべき項目も挙げておいたので参考にしてもらえればと思う。

<DX新規事業ミッションで最初に確認すべきこと>
・目的:なぜ・何のために、新規事業開発が必要なのか。Visionや中期事業戦略との関連性。

・ビジネス領域の指定やその理由:
 ビジネスオーナーが筋が良いと考えているビジネス領域や事業仮説とその理由

・活用したい要素技術や自社アセットとその理由:
 ビジネスオーナーが活用したいと考えている要素技術や自社アセットとその理由

・ビジネスインパクト:
 期待されるビジネスインパクト(売上構築・費用削減・既存事業の受注率向上など)の
 理想・現実・最低水準を確認する

・スケジュール:上記ビジネスインパクトを実現すべき時期と初回アウトプットのタイミング

・予算・権限:
 新規事業の検討にあたり利用可能な費用(調査費など)と自分で判断して良い範囲の確認

・その他:新規事業検討の前提条件・制限事項などについて確認する

「自由に検討して良い」と言われたとしても、上記項目を1つ1つ確認していくと、
ビジネスオーナー自身も無自覚だった前提条件が明確になる事がよくある。

反対に本当に何も制約条件がないという時もあるが、これは懐が深いというポジティブな場合もあれば、
ノープランか無関心(つまり本気ではない)という事もある。
後者の場合はそもそもなぜプロジェクトが始動しているのだ?と疑問に思うかもしれないが、
そのような状況は現実にありえる。不思議ですよね。

オーナーにやる気がないプロジェクトに時間を使うことほど無意味なことはないので、
上記項目の確認を通して、オーナーの関心度を高めていく関わりが必要になる。

ちなみに、もし私がオーナーにやる気がない新規事業企画のミッションを拝命したら、
丁重にお断りさせていただくと思う。

この記事はここまで。次回はWillの確認についてお伝えしたいと思う。

それではまた。

❏書籍紹介
ビジネスプロデューサーの仕事を、新規事業開発の企画プロセスと重ねて解説しています。
よろしければ手に取ってみてください。
>>『多彩なタレントを束ね プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事』

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
目次