マーケティングの入り口は「顧客と市場を理解して、ニーズをとらえる」こと。
個別の顧客を理解することで、その集合体としての市場理解が可能になる。
顧客=自分が向き合うべき相手
ここで改めて、顧客という言葉の定義を確認してみたい。
顧客という言葉を聞くと多くの方は、
「自社の商品を既に購入している人(既存顧客)や今後購入の見込みがある人(見込み顧客)」というように、
購入する人を前提に考えると思う。それがビジネスでは一般的ではあるのだが、
私は顧客の定義を「自分が向き合うべき相手」という風に少し拡大して考えている。
そうすると、実はマーケティングの知識や考え方がすべてのビジネスパーソンが活用できる武器となるのだ。
たとえば採用担当者の顧客は誰になるだろうか。
皆さんもお察しのとおり、採用担当者の顧客は求職者である。
採用担当者の仕事は、新卒・中途問わず顧客である求職者のニーズを理解し、
自社という商品の魅力を伝えることで、説明会や面接に参加して貰ったり、最終的には内定承諾という形で
自社へ入社して貰うことだ。
それではシステム開発担当者の顧客は誰だろうか。
それはシステムを使う人である。システム開発のプロジェクトでは顧客ではなくユーザーという言葉が
好んで使われるが、ユーザーが社員であれば社員が顧客となり、ユーザーがお金をいただくお客様ならば、
お客様が顧客となる。
いずれにしても、
顧客ニーズを満たしている機能を搭載した、使いやすく、安定的に稼働するシステム開発が求められる。
顧客と市場の関係
顧客の定義は「自分が向き合うべき相手」と伝えたが、市場の定義を考えてみよう。
市場とは「ある商品の需要と供給がマッチングされ、お金のやり取りが生まれている場所や状態」
のことである。
たとえば「海や川で遊ぶときに日焼けを予防したい」という需要(欲求・ニーズ)に対して、
「日焼け止めクリーム」という商品が提供されている(供給)場所や状態があるならば、
そこには市場が存在している。マッチング数が多ければ多いほど、市場規模は大きくなる。
一方で「機械や道具を使わずに空を飛びたい」という需要があったとしても、
それを実現する手段が提供されていなければマッチングが発生しないので、そこにはまだ市場は存在しない。
すでにマッチングが発生している市場が顕在市場であり、
需要はある・ありそうだがマッチングが発生していない市場が潜在市場という事になる。
ところで、「新しい市場機会を発見する」という言葉を聞くと、
需要と供給がマッチングされそうな場所や状態を、いきなり塊として発見することを
想像する方がいるかもしれないが、それは錯覚である。
さまざま個人が、各々の価値観・ライフスタイルをもとに、さまざまな欲求をもっている。
市場はそのような「個々の顧客が集まって」形成される場所や状態なので、
まずは顧客個人の欲求を深く掘り下げて理解する必要がある。
そして、掘り下げた欲求と同じ欲求・似たような欲求をもつ人々が他にもいないか?
という視点で塊の存在(=市場)を見出していくのだ。
市場は無機質な集団ではない。
さまざまな価値観・欲求をもつ個人が集まった、血の通った人々の集まりである。
個々の顧客に向き合うことの重要性
現代は忙しく、そして世の中には情報が溢れているため、
顧客理解をインターネット検索で手軽に済ませてしまうシーンがあるかもしれない。
「60代 ニーズ」や「10代 流行」のように検索すると、さまざまな記事や調査結果などが表示され、
ある程度の顧客ニーズを理解した気分になってしまうこともある。
しかし、手軽な検索で得られる情報は側面的であったり、信頼性に疑問が残る。
それら情報から顧客の顔・価値観・欲求などを想像するのは難しい。情報に手触り感がないのだ。
需要・欲求・ニーズという人間の生々しい気持ちをとらえる為には、
インタビューや観察を通して個々の顧客に深く向き合い、
価値観や欲求を深く掘り下げて理解していく姿勢が重要なのである。
それではまた。