前回の記事でお伝えしたように、ビジネスプロデューサーは両利きであることが求められる
あるスキルテーマにおいて、論理型と情理型をどちらも使いこなせると両利きとして統合スキルを
習得していると考える。
ビジネスプロデューサーが身につけるべき両利きスキルは9つあり、
「1.行動力」「2.重層的な知識」「3.柔軟な思考力」「4.チームビルディング力」「5.方向づける力」
「6.会議運営力」「7.伝達力」「8.プロジェクトマネジメント力」「9.包容力」である。
9つのコアスキルの概要を押さえる
本記事では9つの両利きスキルを俯瞰し、どのようなスキルを持つ人がビジネスプロデューサー
足り得るのかという事を、イメージして貰いたいと思う。
ビジネスプロデューサーのコアスキル① 「行動力」
何よりも重要なのは「行動すること・行動しつづけること」。
スキルがなくても行動できることは極めて重要であり、行動力にまさるスキルはないとも言える。
意志があるだけでは不十分で、行動がともなうことが大切だ。
行動するという事は、何かを実際に経験するという事もでもある。
行動して経験すれば、たとえ上手く言語化できなくても何かがわかるし、
何かが自分の心身に蓄積される。物事も動いていく。
行動力には論理優位型・情理優位型という分類はない。
モチベーション・フットワークの軽さ・度胸などのマインドセットが重要となる。
ビジネスプロデューサーのコアスキル② 「重層的な知識」
物事を掘り下げて深く理解していく探究心(論理優位型)と、
さまざまな事象・テーマに興味をもって学びの対象を広げられる好奇心(情理優位型)で構成される
探究心が縦の深さを、好奇心が横の幅を表しており、その掛け算で表される面積が重層的な知識になる。
現代はあらゆる環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難なVUCAの時代だ。
VUCAとは、「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」
の頭文字をとった造語だが、時代の特徴をわかりやすく表現していると思う。
VUCA時代においては、いま何が起きているのかを把握し、
これから何が起きるのかを予測するのは非常に難しい。
だからこそ、これまで以上にさまざまな物事を広くかつ深く理解し、
少しでも早く的確な対処法を見いだしていくことが、生き残る上で重要になってくる。
このような意識・危機感をもって学び続けることで、知識が重層化していく。
ビジネスプロデューサーのコアスキル③ 「柔軟な思考力」
論理的に考える力であるロジカルシンキング(論理優位型)と、
相手の立場や感情を想像する共感力・傾聴力(情理優位型)で構成される。
知識がなければ考えることが出来ないため、重層的な知識の土台があって思考力が活きてくる。
ロジカルシンキングと共感力・傾聴力は、とかく別個で語られることが多く、
スキルがどちらかに偏っている人が多い傾向にある。
しかし実際に自分に当てはめて考えると容易に理解できると思うが、
私たちは物事を頭で理解し、納得して行動を起こすこともあれば、
理由を上手く説明できないけれども、心が惹かれて動き出すこともある。
頭も心も、論理も情理も、どちらも重要なのだ。
そしてさらに、自らの考えや一度出した結論にとらわれずに、
柔軟に考え方・感じ方を変化させられることも大切だ。
ビジネスプロデューサーのコアスキル④ 「チームビルディング力」
チームビルディング力は、内省して自分を理解する力(論理優位型)と、
共感・傾聴して他者やチームを理解する力(情理優位型)で構成される。
知識や思考力があるから、的確に自分や他者を理解することができる。
自己理解・他者理解で有効なのはWill/Can/Know + Personalityという4つの視点だ。
Willはやりたい事・意志をもっている事、Canはできる事・できそうな事、
Knowは知っている事・経験した事であり、Personalityは性格や価値観だ。
自分とチームメンバーのWill/Can/Know+ Personalityを的確に理解していれば、
チームのパフォーマンを最大化させる道筋が自ずと見えてくる。
ビジネスプロデューサーのコアスキル⑤ 「方向づける力」
ビジネスにはさまざまな問題が発生している。
あちこちで発生しているので、問題を見つけること自体は難しくない。誰でもできる。
重要なのは、どの問題を解決するかを選び、その解決策を見つけ出すことだ。
皆さんご存知の通り、問題は「ありたき姿」と「現状」のギャップだ。
こうしたい・こうなりたいという「ありたき姿・理想の状態」に対して、
そうなっていない現状が「問題」となる。現状維持で良い場合、そこに問題は発生しない。
そして、課題とは「数ある問題の中で、解決策を考える対象として選ばれた問題の解決方法を考えること」だ。
日常的に課題は与えられることが多いかもしれない。しかし、課題設定がそもそも検討違いであれば、
どんなに良い解決策を考えても成果にはつながらない。
反対に課題設定が的確でも、解決策を思いつけなれば課題設定の意味がない。
課題設定力と解決策の着想力は同時に発揮される必要があるのだ。
私は課題設定力と解決策の着想力が統合されたスキルを「方向づける力」と呼んでいる。
業務も組織もしっかりと方向づけがなされると、
その後のビジネスが力強く・スピーディに推進されていく。
ビジネスプロデューサーのコアスキル⑥ 「会議運営力」
チームで仕事を円滑に進めていく為には、適切なコミュニケーションが欠かせない。
また、スタート時点で目的・目標・課題設定・解決策などを合意できていても、
実行過程でさまざまは認識の齟齬・衝突(コンフリクト)・停滞などが必ず発生する。
このような状況を打開する、あるいは未然に防ぐためには会議運営力が役立く。
会議は誰でも企画・設定できるため、会議がコモディティ化し、質の低い会議が量産されている。
すべての会議に目的があって、その目的達成のために適切に運営されるべきなのだが、
会議の質にこだわって会議運営をしているビジネスパーソンは驚くほど少ない。
ビジネスやプロジェクトをリードするビジネスプロデューサーの会議の質が低ければ、
メンバー全員の会議の質も確実に低下するので、しっかりとスキルを身に着けてもらいたい。
会議運営力は、いつ・誰と・どのような会議を行うかという会議設計力(論理優位型)と、
会議の質を高めるファシリテーション力(情理優位型)で構成されている。
質の高い会議は業務も人も、円滑に動かす潤滑油となる。
ビジネスプロデューサーのコアスキル⑦ 「伝達力」
問題・課題・解決策が導かれたとしても、それをチームやステークホルダーが理解してくれなければ、
仕事や組織を動かしていくことはできない。特に新しいメンバーや他部門を巻き込んでいくためには、
適切に言語化し、わかりやすく図解して周囲に伝える言語化力・図解力(論理優位型)が重要になる。
また、いくら良い資料をつくって理解を促せたとしても「やってみよう・面白そうだ」という、相手の気持ちに
火をつけられなければ、やはり人を動かすことは出来ないため、
人のやる気を喚起するストーリーテリング力(情理優位型)も欠かせない。
これまでにお伝えした①~⑦はビジネスプロデューサーの基礎スキルだ。
自身のパフォーマンを生みだす足腰として、管理職になる前のプレイヤー時代に身につけておこう。
ビジネスプロデューサーのコアスキル⑧ 「プロジェクトマネジメント力」
プロジェクトで発生する業務のQCD向上を実現する業務マネジメントスキル(論理優位型)と、
ステークホルダーマネジメント力(情理優位型)が主要なスキルだが、非常に複合的なスキルでもある。
プロジェクトマネジメント力は、ビジネスプロデューサーとしてプロジェクト・チームの中心的役割を
果たすために身につけたいスキルだが、いわゆるマネジメントスキルでもある。
ビジネスプロデューサーでなくとも、管理職であれば身に付けるべきスキルだと思う。
①~⑦を土台とし、その上にマネジメントスキルを築くことが、ビジネスプロデューサー・マネジメント
として大成する秘訣だ。
ビジネスプロデューサーのコアスキル⑨ 「包容力」
色々と考えた結果、最後のビジネスプロデューサーのコアスキルは「包容力」を選ばせてもらった。
①~⑧のスキルを身に付ければ、業務や組織のパフォーマンスを最大化できるのだが、
現実にはスキルだけではどうにもならない事態も発生するし、チームやプロジェクトが良い状態に
変化するには時間が必要にもなる。
そのような時に焦らずどっしりと構えて、多様な可能性が相乗効果を発揮するまで粘り強く・温かく、
チームに働きかけられる包容力が重要になるように思う。
また、多様な人材・価値観・意見がチームに存在していても、
チームや場の雰囲気が自由な発言をうながすものでなければ、多様性が出現することができない。
多様性の出現には風通しの良さ重要であり、風通しはビジネスオーナーやビジネスプロデューサーの
包容力の影響が大きいのだ。
包容力は人間力と言い換えても良いのだが、人間力は意味が広すぎてとらえにくいため、
懐の深さを表す包容力という言葉を選んだ。
あらゆる業務には期限や納期があるため、いつまでものんびり待ってはいられない現実もあるが、
ビジネスプロデューサーは多様性の発露をギリギリまで受け入れる・待つ事を心がけてもらいたいと思う。
また1~8の地力があれば、待ちすぎてスケジュールや業務品質にリスクが生じたとしても、
最終的に自分が頑張れば、帳尻を合わせられる範囲が大きくなる。
そのような意味でスキルは包容力の源になるとも言えるだろう。
以上が、ビジネスプロデューサーの9つのコアスキル概要だ。
9つのコアスキルは、すべて業界や業種を超えても通用する「ポータブルスキル」でもある。
あなたがビジネスプロデューサーを目指さなくても、習得していて損はない。
今後の記事で各スキルの詳細を伝えていくので、
興味をもったスキルからぜひ読み進めてもらいたい。
なお、ブロク記事はあくまでスキルアップ方針を定めるための概要やポイントの解説である。
そもそもスキルは文章を読んで身につくものではなく、実践で訓練してこそ身につくもの。
そのことは忘れないでもらいたい。
実践・経験にまさる学びはないのだ。
それではまた。