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【ビジネスプロデューサー⑧】#4 チームビルディング力>共感力・傾聴力

自己理解が深まったら同様に他者を理解していきます。

視点は自己理解と同じとなるが、価値観や好き/嫌いのような情報は、
重要である一方でデリケートな内容なので、開示し合うのが難しいもの。
したがって、Personalityを除いたWill/Can/Knowを中心に相互理解に努めることが現実的だ。

目次

ビジネスプロデューサーのコアスキル #4 チームビルディング力
内省力×共感・傾聴力

相互理解を的確に行うために必要なのが共感力・傾聴力だ。

共感力は「相手の気持ちに寄り添える力」であり、
傾聴力は「相手が話していること・発していることを真摯に聴く力」のような定義が一般的だと思う。

言葉の定義からすると、共感は気持ちや感情に意識が向いており、
傾聴は話の内容や意図に意識が向いていると解釈できるが、
「共感も傾聴も意識の中心が自分ではなく相手にある」という点は同様。

スキルとして重なり合う部分も大きいため、本書ではほぼ同じスキルとして扱っていきます。

プロジェクトメンバーで行う相互理解の視点

<プロジェクトメンバーで行う相互理解の視点>
・自己紹介(名前や簡単な業務経歴)
・プロジェクトで達成したいこと
・プロジェクトへの期待や不安
・プロジェクトにおける役割認識
・得意な業務、苦手な業務
・提供できる知見、提供できない知見

相互理解はMTG形式でも良いのだが、リラックスした雰囲気の方が相互理解は円滑に進むため、
広い会議室を押さえてワークショップ形式&コーヒーとお菓子を片手に実施する、などの工夫が有効になる。

そして、誰かが発表(自己開示)を行っている際は、共感しながら傾聴する姿勢が重要だ。

期待や不安など感情がともなう話をしているならば共感を示し、
得意な業務・提供できる知見などを話しているときはしっかりと傾聴する。

相手が上手く言語化できずに、言いたいことが伝えきれていない状況があったならば、
言わんとしていること=意図」を読み取れるよう傾聴する。

共感しながら傾聴していれば、理解しようとしている姿勢が相手にも伝わるので相互理解が一気に進む。
自分に関心を寄せてもらって嬉しくない人はいません。

反対に、自分の発表が終わったら腕組みしてうつ向いてしまうなどは最悪。
相互理解はおろか、関係性をつくる姿勢がまったく感じられない姿勢だ。

ところで、相互理解に関連して最近とても気になっているがオンラインMTGでの画面オフ問題だ。
自分が発表している時だけ画面をオンにして、発表が終わったらすぐに画面をオフにする人、
至るところでお見かけする。

マイクオフは、周囲の雑音が入る事も多いので理解できますが、画面はオフにしなくても良いはずだ。
何十人も参加しているMTGでのオブザーバー参加や、セミナーでの聴講者という状況ならばわかるのだ、
数名のMTGなのに画面オフ。

相互理解の姿勢・相手の話への尊重が欠けている態度だと思う。
きちんと話を聞いているのかもしれないが、発表者からしたら気持ちの良いものではありません。

傾聴のあいうえお

皆さんは「傾聴のあいうえお」をご存知だろうか?

<傾聴のあいうえお>

あ:相手の目をみて
い:一生懸命に
う:うなずきながら
え:笑顔で
お:終わりまで (オウム返し=繰り返しの場合もある)

画面オフは「傾聴のあいうえお」が1つも当てはまっていない。

また、人は話をしているときに、話の内容だけでなく表情・身振り手振り・話しぶり・雰囲気などから、
様々な情報を発している。意識的にも無意識的にも。

画面をオフにしているという事は、そういった自分が発信する情報を遮断しているという事なので、
相互理解の意志がないという事を暗に伝えているようなものだ。
画面オフが常態化しているチームが良いチームになるとは思えないので、画面オフは是非とも止めてください。

チームビルディングの出発点となるが相互理解である。

誰が・何をやりたいのか・できるのか・知っているのかを相互で理解していれば、
どのような役割が適任なのか、どのような知見やスキルを補う必要があるのか、
相性が良さそう/悪そうな組み合わせがあるかなど、チームのパフォーマンを最大化させる道筋が見えてくる。

トランザクティブ・メモリー

このようなチームの相互理解状態に関する理論で有名なのが、
ダニエル・ウェグナー教授の提唱する「トランザクティブ・メモリー」だ。
トランザクティブ・メモリーとは「誰が何を知っているかを、知っていること」であり、
組織全体が何を知っているかではなく、
組織の全員が「誰が何を知っているかを、知っておくことが重要である」という主張である。

この概念の解説は入山章栄氏の著書が詳しいので、興味がある方は参考にしてください。
>>『世界の経営学者はいま何を考えているのか』

ウェグナー教授のトランザクティブ・メモリーは、
主にKnowにフォーカスされた内容になっており、問題解決やチームビルディングで応用する
には不十分なので、私はWill/Can/Know+Personalityに範囲を広げて、
「誰が・何をやりたいのか・できるのか・知っているのかを、知っていること」を
トランザクティブ・メモリーである定義している。

更につけくわえると、トランザクティブ・メモリーは社内に限定する必要もない。
むしろDX新規事業開発のような難しいプロジェクトにおいては、
トランザクティブ・メモリーを社外へと広げて考えないと必要な人材・知見を獲得できない。

ここでビジネスプロデューサーの定義を改めて振り返ってみたい。

「ビジネスプロデューサーとは、ビジネスの目的・目標達成を実現するために、
必要な経営資源(情報・ヒト・カネ・モノ)を調達し、
多様性をもつチームのパフォーマンスを最大化させ、
顧客への提供価値を最大化する責任者であり伴走者」

この前段に記載している必要な経営資源の中でも「情報と人」の調達を行うために、
社内外に広げたトランザクティブ・メモリーを保有している必要があるということだ。

専門家を目利きする力を養おう

またトランザクティブ・メモリーはただ広ければ良いわけでもなく、
「適合性」と「確かな専門性」の見極めが重要となる。

適合性は、プロジェクトやチームがいま求めている人材や知見の要件と、
調達しようとしているものが適合しているかどうかという事だ。
どれだけ優れた人材や知見だったとしても、チームが求めている内容と合致していなければ意味がない。

そしてもう1つが「確かな専門性」である。
確かな専門性とは、その人材の専門性(スキルや知見)が確かな実績や根拠に裏付けられた、
正しいものかという事だ。良くも悪くも、SNSやWEBを通して誰もが自由に情報発信できるようになり、
誰もが簡単に専門家を名乗ることができる世の中だ。

新規事業をつくった事がない新規事業コンサルタント、システムの知見に乏しいITコンサルタントなど、
肩書と実態に乖離がある方がいらっしゃるのも事実である。
もちろん、名乗るからこそそこに近づくための努力がはじまり、
機会も生まれて最終的には実力が伴ってくるという事があるので、名乗ることが悪いとは思わない。

ただ、ビジネスプロデューサーとしてビジネスの目的・目標達成に責任を追う立場としては、
「できない人に機会を与えて結果がでなかったけど良い成長機会だったね」と終わらせるわけにはいかない。

社内プロジェクトにおいて、人材育成の観点からそのようなアサインメントはありえるが、
外部人材に対しては即戦力としてお金を払うことになるので、確実に成果を出して欲しいもの。
ビジネスプロデューサーには、専門性の確からしさを客観的に判断する「目利き力」も必要になる。

目利き力を高めるのも経験を重ねることが有効なのは言うまでないが、
社内外で実際にその人や会社と仕事をした人を探して、実態を確認してみるなどの対策を行う。
企業サイトの情報・営業担当のセールストーク・メディアでの紹介記事は、
基本的に良い面しか語られないので、目利きを行なう際の情報源としては不十分、
関連するビジネスイベントでそれとなく対象企業の評判を集める、
SNSでの投稿内容からその方の人柄や仕事ぶりを想像するなど、判断材料を集める工夫をしていこう。

目利き基準のイメージとしては、たとえば、ある新規事業開発でつくりたいものがWEBサービスを
提供するスマホアプリで、アプリのUIデザイナーを探しているとする。
この場合、デザイナーがWEBサイト(企業サイトやランディングページ)の経験しかなく、
システム開発を伴うアプリケーションのデザイン経験がなければ、専門性は合致しない。

「実際にデザイン経験がある、最終的な制作物の種類と数を確認する」という目利き基準を
事前に持っておく(基準は他にもあるが一例として)、というイメージだ。

このように自己理解から出発し、社内外問わず人や知見を調達し、
関係者全員で相互理解の状態を形作っていくことが、
ビジネスプロデューサーに求められるチームビルディングである。

それではまた。

❏書籍紹介
ビジネスプロデューサーの仕事を、新規事業開発の企画プロセスと重ねて解説しています。
よろしければ手に取ってみてください。
>>『多彩なタレントを束ね プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事』

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