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市場規模を超ざっくり算出する方法

マーケティング戦略立案の一環としてターゲティングを考えるとき、
新規事業開発の企画で事業計画を考えるときなど、市場規模を算出しなければならない時は意外と多いもの。
この記事では超ざっくり市場規模を算出する方法をお伝えしたい。

目次

市場規模の数字は言ったもん勝ち

まず最初に断っておくと、市場規模を正確に把握するのは非常に難しい作業である。
経営戦略・事業戦略部門のスペシャリストが、さまざまなデータやシミュレーションを駆使して算出したり、
シンクタンク・コンサルティングファームが業界分析の一環で算出して、有料レポートを販売していたり
するものだ。

しかし、そのようなスペシャリスト達が算出している数字も仮定に仮定を重ねて作られているもので、
数字自体の正確性・信憑性はあまり高くない。市場規模の大小を比較する・理解する材料としては
一定の価値があるが、その数字を鵜呑みにして意思決定するとリスクの方が大きい。

スタートアップのPitcc Deckなどには市場規模5,000億円!など大きな数字が記載されるものだが、
大きな数字を見せると、企業や事業の将来性が高いと受け止められる事があるため、
算出にあたっては根拠や精度を度外視して、大きな数字がつくられるという状況さえある。

極端にいえば、市場規模の数字は言ったもん勝ちなのである。

したがって、ビジネスパーソンが精緻な市場規模算出に精を出す必要はなく、
ざっくりと大小が判断できる数字を得られれば充分だと考えている。

以降で数字の集め方・算出方法を簡単にご紹介していく。


官公庁や調査会社が算出している数字を探す

まずは自分で算出するのではなく、公開情報を探してみよう。

官公庁・業界団体・専門の調査会社などが市場規模を算出して公表している。
また、大手企業のIR資料の中に、その企業がターゲットとしている市場規模が記載されているケースもある。
これら情報の中には無料で入手できるものある為、いったんアクセスすることをオススメしたい。

こうした情報ソースは無料で使えるため、非常に重宝する。
特に「政府統計の総合窓口(e-Stat)」は有益である。
e-Statは各府省が公表する統計データを一つにまとめ、統計データの検索をはじめとした、さまざまな機能を備えた
政府統計のポータルサイトなのだが、使いこなせば非常にパワフルなサイトだ。

有益な公開データが多数ある一方で、ほとんどの場合は調べたいターゲット市場よりも大きな括りの情報でもある。
たとえば「美容・健康関連市場」「ファーストフード市場」「ソーシャルゲーム市場」のように、
より分野を絞った市場の情報が欲しい場合は、専門の調査会社が提供している有料レポートやサービスを利用すると
良いだろう。私が市場規模算出をする際によく利用するサービスの一例を以下に紹介しておく。

市場規模算出に使える情報ソースの一例

主要企業の売上とシェアから予測する

主要企業の売上とシェアから市場規模を推測する方法もある。
たとえば企業数が少ない自動車業界などはわかりやすいのだが、
トヨタ・ホンダ・日産・マツダなど主要企業の売上合計をIR情報から算出し、
その企業の売上が全体売上の何%を占めていそうか?という事から市場規模を推計していく。

あくまで仮の数字だが、5社の売上合計が60兆円で、日本における自動車市場の売上80%を占めているとすれば、
60÷0.8=75兆円=自動車業界の市場規模となります。
もちろんこの75兆円という数字には、自動車メーカーに部品や素材を納めている関連企業の
存在などは考慮できていないため、最低でも75兆円という捉え方が必要な数字となる。

ちなみに「主要5社で80%を占めているだろう」という考え方は、
パレートの法則を活用している。

パレートの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が1896年に提唱した概念であり、
人口の二割を占めるにすぎない少数のお金持ちが社会全体の富の八割を占有し、
残った二割の富を人口の八割を占める貧しい人たちで分け合うという、富の偏りを指摘したものだ。
このパレートの法則は社会現象・自然現象・ビジネスなど、さまざまなシーンで見られると言われている。

実は小売店の売上構成でもよく見られる現象で、店舗売上を商品別に分解すると、
だいたいどの店舗も売上上位20%を占める商品群で、店舗全体売上の80%を占めている。不思議なものだ。

顧客数×購入単価×購入率で考える

最後の1つは「見込み顧客が(顧客数)、いくらで(購入単価)、年間何回購入するか(購入率)」の掛け算で
市場規模を考えていく方法だ。

たとえば男性をターゲットにした電気シェーバーの場合で考えてみる。
見込み顧客はひげ剃りが必要になる男性なので、いったん成人男性すべてとする。
ひげ剃りは電気シェーバー派とカミソリ派がいるため、いったん70%は電気シェーバー派であると仮定。
価格コムなどを参考にしながら、電気シェーバーの平均価格は20,000円と想定。
電気シェーバーは1回購入すると4~5年は使い続けると思うので、年間購入回数は0.2~0.25だとする。
小数点になっているのは1年に1回も買わないため。これら数字を掛け算すると次のようになる。

▼枠を囲んで図っぽくする

日本の成人男性:5,054万人(2018年4月1日時点、総務省人口推計より)
×
電気シェーバー派:70%(ヒアリングによる仮説)
×
平均単価:20,000円(価格コムを参考に設定)
×
購入率:0.2~0.25(ヒアリングによる仮説)

=1,415億~1,768億

日本の成人男性の数字以外はすべて仮説なので、この数値の妥当性は別途検証が必要だが、
電気シェーバー派の比率・シェーバーはだいたい何年間使い続けるかなどは、
インタビューや調査などを行えば、大きくズレない数字を仮置きすることはできる。

買い替えサイクルを4~5年としているので購入率が0.2~0.25になっているが、
5年間の累計市場規模は単純に4~5倍はあると考えることもできる。

なお、精度が粗かったとしても、ターゲットの市場規模を数字で把握する事は重要でもある。
たとえば3年後に10億の売上を目指したい場合、そもそも市場規模が30億しかなければ非常に
チャレンジング(というかほぼ無理)な目標になるが、市場規模が300億であれば、
しっかりと投資すれば達成できるかもしれない(現実はそれでもかなり難しいが)。

いずれにしても本記事でお伝えしたかったのは、
市場規模算出は、事業計画・売上計画の妥当性をチェックする役割を果たせれば充分であり、
いたずらに時間をかけるべきではない、という事である。

それではまた。

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