今回は目標設定や評価のポイントについて伝えていきたい。
過去記事で「人事考課は部下の人生を左右する重い意思決定だと認識すること」の重要性を強調した。
人事考課は部下の給与を決めるし、キャリア形成にも大きな影響を与える。だからこそ部下のことを
丸ごと理解し、適切に目標を設定し、そして達成状況を客観的に・的確に評価する。
「まぁよくやったと思うよ」「ちょっと物足りなかった」というふわっとした総論や印象で
考課をしてはいけない。詳しくは過去記事を参照して欲しい。
絶対的に正しい評価・公正な評価は存在しない。
目指すべきは納得感の高い評価である。そして納得感のある評価は、適切な目標設定から生まれる。
しかし、納得感のある目標設定や評価を実行するのは簡単ではない。
大抵の場合、上長評価と部下の自己評価にはギャップが生まれる。
上長評価>部下の自己評価の場合は問題ないが、逆の場合が多いので問題が起きるのだ。
管理職なら必ず経験する、目標設定・評価面談での問題
「上長評価<部下の自己評価(部下の自己評価が上長評価よりも高い)が起きる主要因は以下の2つだ。
【1】目標達成の基準が不明確
【2】目標設定の水準が不適切
評価にギャップを生む最も大きな要因は【1】である。
目標達成の基準が不明確で、お互いがぼやっと「なんかそんな感じで」という状態で始まってしまうと、
考課のタイミングでだいたい揉める。
部下は誰だって自分の頑張りを認めてもらいたい。自己アピールが強い人だっている。
大抵の場合、主観的な頑張りや達成度合いが長々と記載されていくわけだが、
目標達成の基準が曖昧な場合、それを客観的に評価することができない。
上司が「私は物足りなかったように感じる」と言っても、そもそも基準がなければ部下は納得できくい。
たとえば営業であれば「顧客理解を深め、顧客との関係性を進化させる」という目標などが代表例だ。
顧客理解を深める・関係性を進化させるでは主観が入りすぎるため、基準が不明確なのだ。
目標達成の基準が明確であっても問題は起きる。
それが【2】目標設定の水準が不適切な場合だ。目標は高すぎても低すぎてもいけない。
部下の現在の実力では少し難しいと感じる水準で設定することが望ましい。
ちょっとだけ上の階段を登り続けていけば、成功体験を得ながら、気がつけば高いところまで辿り着ける。
このあたりの感覚は登山に似ているかもしれない。1合目・2合目…5合目と着実に登っていくのだ。
スマートな管理職は目標設定も「SMART」
こうした問題を避けるためにも、適切な目標設定はSMARTに行いたいものだ。
SMARTは「頭のよい・賢明な」という意味の単語だが、
実は適切な目標設定に必要な視点をまとめたフレームワークでもある。
▼SMARTな目標設定
Doran GT(1981) “There’s a S.M.A.R.T way to write management’s goals and objectives”,Management Review,
・S(Specific/明確性):具体性誰から見ても明確でわかりやすく、具体的になっていること
・M(Measurable/計測性):目標を定量化し、達成状況が簡単に計測できること
・A(Achievable/達成可能性):目標が背伸びすれば達成でき、現実的な水準であること
・R(Relevant/連動性):会社や部門の戦略・方針、本人の意志や価値観と連動していること
・T(Time-bound):期限いつまでに目標を達成するかの期限が設定されていること
を筆者の業務経験をもとに加筆・修正
「明確で具体的で、測定可能であり、背伸びすれば達成でき、戦略や意志とも連動していて、
期限が設定されている」目標がSMARTな目標だ。反対に、「曖昧で抽象的で、測定できず、非現実的。
さらに戦略と連動しておらず、期限が設定されていない」目標は最悪、ということになる。
先の 「顧客理解を深め、顧客との関係性を進化させる」 をSMARTに置き換えると、次のようになる。
「全社重点クライアントであるA社とB社の業績・事業戦略・商品戦略を開示情報や担当者ヒアリングによって
理解し、顧客理解シートに内容を可視化(最初の1ヶ月でフォーマット作成も含めて完了させる)。
その上で、半年間で5件、新しい取り組みをご一緒する提案を行い、100万円以上の新規案件を1件受注する。
SMARTの視点をもって的確に目標設定し、部下と合意した状態でスタートできれば、
評価のタイミングで問題がおきる事はほぼ無くなる。
ぜひ心がけて欲しい。
それではまた。