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【ビジネスプロデューサー⑮】#6 会議運営力 >ファシリテーション力

ファシリテーションは英語でfacilitation:容易にすること・促進という意味で、
ファシリテーション力は「物事を進みやすくする為にチームや個人に適切な働きかけをする力」である。

ファシリテーション力は主に会議やワークショップなどで活用されるため、
会議の司会・進行役がファシリテーターと呼ばれることが多いが、
司会・進行役とファシリテーターは厳密に言うと異なる役割である。

ファシリテーションの目的は、
「物事を進みやすくする事=会議目的が達成されて、業務や組織がより良く動く状態にすること」なので、
タイムキーパー的に進行役だけを務め、ファシリテーション目的を達成していない人は
ファシリテーターではない。もちろん1人で両方とも対応している方はいらっしゃるが、
司会・進行役とファシリテーターは役割も必要スキルも異なる事は認識しておこう。

ビジネスプロデューサーは、ファシリテーター役を(結果的に)担う事も多い。

目次

ビジネスプロデューサーのコアスキル #6 会議運営力
会議設計力×ファシリテーション力

ファシリテーション力の7つのポイント

良いファシリテーションを行うためのポイントは、次の通りだ。

<ファシリテーション力のポイント>
1・会議目的を的確に理解していること
2・参加者のWill/Can/Know+ Personalityを会議中に理解・想像できること
3・発言者の思考特性や論理構造を想像できること
4・参加者が感じている感情(期待や不安、喜怒哀楽)を想像できること
5・参加者間の関係性を想像できること
6・適切な問いをつくり、適切な相手に投げかけられること
7・的確な議事録作成をリードできること

まず「会議目的を的確に理解していること」が重要となる。
特に説明は不要かと思うが、会議目的の達成がその会議における成果なので、
会議目的を的確に理解していることが大前提だ。

会議目的が曖昧な場合や、目的に違和感を覚えたら目的の再検討から始めることになる。
ファシリテーターが会議設計とファシリテーションを兼任する場合は、
ファシリテーターが目的以外にも会議設計力でお伝えした検討事項を設計していく。

適切な会議設計と準備を行えば、多くの場合は質が高い会議になり会議目的は達成されるはずだ。
しかし「発散」や「合意形成・意思決定」が目的の場合は、会議中に想定外の事態が起こりやすく、
臨機応変・当意即妙な対応が求められます。そこで必要になるのがファシリテーション力だ。

どの会社・プロジェクトにおいても、合意形成・意思決定における基準があると思う。
参加者の満場一致や過半数の賛成が必要などの基準である。
その基準クリアにあたって、参加者のWill/Can/Know+ Personalityを理解していれば、
誰が合意に反対しそうなのか・誰が議論についてこれなそうかなど、リスクを事前に想定する事ができ、
準備段階で対策を練ることができる。

ただし、そのような事前情報を十分に得られないことも多々あるため、ファシリテーターは、
会議中の参加者の表情・反応・質問内容などから、参加者のWill/Can/Know+ Personalityを
想像するスキルが求められる。

また参加者が賛成意見・反対意見を述べている時には、話の内容を聞くだけではなく、
その背景にある思考特性(新しい挑戦には保守的、短期的成果よりも中長期的な成果を重視など)や、
論理構造(どのような事実・経験にもとづいて論理を展開しているのか)までも想像する。

発言者は、自身の思考特性や論理構造に対して基本的に無自覚なことが多く、考え方に癖があることや、
論理構造に偏りがあることには気づきにくいもの。

そこでファシリテーターが、たとえば挑戦に保守的な発言者に対して
「新しい挑戦はリスクが高いので慎重に判断すべきだと思いますが」とリスク検討重要性へ共感を示しながらも、
「今までのやり方ではジリ貧なのも事実なので、どこまでリスクをとれるかを議論する価値はあると思います」
のように発言することで、論点を挑戦する/しないではなく、どのような挑戦ならば許容できるのかに
変えて議論を前に進めることができる。

また、それだけではなく参加者が感じている感情を想像して、
不安を感じている人が多いならば不安を払拭するために根拠や客観的データを厚めに説明する、
こまめに質疑応答をはさんで進行するなどの工夫も必要だ。

参加者の関係性をその場で想像しよう

それから、良くも悪くも特に重要なのは「参加者間の関係性を想像すること」だ。
わかりやすく言うと、「誰と誰の仲が良いのか・悪いのかをその場で感じること」。

本質的でない…とげんなりする人もいるかと思うけれども、実務上はかなり重要だったりする。
ある程度の社会人経験を積むと誰もがビジネスマナーを身につけるので、
会議中に特定個人への好き/嫌いをあからさまに出す人はほとんどいない。

しかし、心の内ではその相手に対して好き/嫌いや価値観の違いを明確に実感しているので、
そもそも相手の話を聞いていない・適当にやり過ごしている・発言に棘や嫌味が混ざるなどの
態度となって現れていたりする。

このような関係性に起因する問題は、論理的に議論を進めても解決されないため、直接的なやり取りが
不用意に生まれないよう工夫する・双方と関係性を構築できている参加者の発言を軸に議論をすすめる、
などの配慮が必要になる。

この関係性問題は、デリケートな話題なので表立って議論されることは少ないが、
発散・合意形成・意思決定など参加者の能動的な関わりが求められる場においては、最重要課題になりえる。
ファシリテーターは中立的な立場として、事前にそのようなリスク確認を行うことはもちろんのこと、
会議中に関係性を示唆する態度を見逃さない観察眼を養うことが大切だ。

適切な問いをつくり、適切に投げる

また、「適切な問いをつくり、適切な相手に投げかけられること」も大切だ。

Will/Can/Know+ Personality・思考特性や論理構造・感情・関係性を想像できても、
それを踏まえてチームや個人に適切な働きかけができなければ、意味がない(もったいない)。

ファシリテーターの役割は物事を進みやすくすること。
その為には「適切な問いをつくり、適切な相手に投げかけられること」が重要である。
そのためには、問いの仮説を考えて、複数の問いを事前に準備することが有効だ。

たとえば、AさんとBさんの合意形成が難航しそうだったら、双方と関係性が構築できているCさんに
「AさんとBさんは異なる意見をもっているようですが、Cさんの考え方を伺ってもよろしいですか?」
という問いを投げてみよう、と事前に想定しておくイメージだ。

ただし、会議体は生き物であり、どのような問いが有効になるかはその場にならないとわからないため、
その場で思いつけることも重要なスキルだ。
経験的に、この「問いをつくる力」は「解決策の着想力」と同種のスキルだと感じている。

解決策の着想力を高める方法は「重層的な知識」×「柔軟な思考力」×「豊富な経験」であり、
短期的に向上させるのは難しいため、さしあたっては「必要になりそうな問いを事前に準備する」が
最善策となる。

ファシリテーション力の最後のポイントは、「的確な議事録作成をリードできること」だ。

議事録で記録したい内容は事前に決めておくが、
議論の流れに任せるだけではそれらが適切に会話されない事もよくある。
会議設計力の記事で触れた内容だが、業務や組織を動かしていくためには、
「合意・決定事項」「継続検討事項」「宿題対応(誰が・何を・いつまでに対応するのか)」を明確にして、
共通認識をもつことが非常に重要となる。
ファシリテーターが、会議の区切りや最後にこれらを確実に確認していこう。

以上がファシリテーション力のポイントだが、想像するや着想する等のキーワードが登場したことから
わかるように、感じる力が重要になってくる。

感じる力は、ビジネスプロデューサーのコアスキル#3 柔軟な思考力>想像力が
基礎スキルとなるので、改めて内容を参照してもらえればと思う。

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それではまた。

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執筆者

中野 崇のアバター 中野 崇 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

・法人向け:新規事業開発と組織開発の伴走型・自立支援型コンサルティング
・個人向け:自分らしいキャリアデザイン支援(コーチング)
・モットー:家事育児、ときどきビジネスデザイナー
・抽象概念と具体的施策の間をつなぐ実践知の体系化が得意
・好きな漫画:「うしおととら」「キングダム」「清く柔く」 など

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