解決すべき顧客課題が設定されたら、市場を分析してターゲットを策定していこう。
市場は、設定した課題(類似課題含む)をもっている人たちが集まり、
そこにお金が流れている領域のことを指す。
市場分析は今でも3C分析が最も実用的
大きくて・優先度が高くて(期限が切られている)・お金を払う意欲がある顧客課題を見つけても、
多くの場合は競合他社がすでに解決に取り組んでいたり、実現が難しいものだったりする。
しかし、現時点で大きな課題として残っていること自体はビジネスチャンスだ。
その課題の解像度を高めて、
最終的には「顧客に課題があるが解決策を提供している競合が弱く、自社の優位性が発揮しやすい課題」
に絞込んでいく必要がある。その為に市場分析を行っていくのだ。
市場分析を行う際は、3C分析のフレームワークを活用する事を推奨している。
3C分析の3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字をとったもので、
顧客・競合・自社それぞれの観点から市場の機会と脅威を洗い出す分析手法だ。
大前研一氏が提唱した古典的なフレームワークだが、
Quick&Dirtyで市場分析が必要な際は今でも最も実用的だと思う。
顧客課題の分析については別記事を参考にして貰えればと思う。
この記事では競合分析と自社分析についてお伝えする。
競合企業やサービスも広く考えるとキリがない為、対象を絞り込むことが大切であり、その起点も顧客課題だ。
顧客の課題ヒアリングを行っている過程で、競合と考えられる具体的なサービス名が必ず1つか2つは出てくる。
まずは、そのサービスの概要や利用顧客などを調べよう。そうすると、サービスを象徴するキーワードが
いくつか見つかるため、そのキーワードを元にさらに調べる競合の範囲を広げていく。
ポジショニングマップをつくる
概ね10~20くらいの競合が出てきたら、すべてのサービスを4象限にマッピングしていく。
このマップのことをポジショニングマップと呼ぶ。たとえばカジュアル衣料品業界において、
縦軸に品質の高低、横軸に価格の高低を設定して簡易的なポジショニングマップをつくると下図になる。
軸は何でも良いわけではなく、顧客への提供価値として重要な2軸を選ぶことが重要だ。
なお、図の中で低品質・低機能という表現があるが、相対的かつ私の主観的な位置づけなので、
該当企業の商品の実態を必ずしも反映していない事、予め理解の上で読み進めてもらいたい。
一般的に防寒・保温など高機能な衣料品は高価になることが多いが、
皆さんもよくご存知のユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)は、フリースやヒートテックなどに
代表されるように、「高い防寒・保温機能を持ちながらも安価」という両立しにくい価値を実現して
市場を席巻している。もちろん前提として「安くて軽くて暖かいアウターが欲しい」
「重ね着は着ぶくれして格好悪いし動きにくい」という大きな顧客課題があり、
前者をフリースで、後者をヒートテックで解決している。
ポジショニングマップをつくると課題が顕在化しているものの、
競合が十分に満たせていない課題がどこにあるかを理解しやすくなる。
もし作成したポジショニングマップの左下象限だけにサービスが集まっている…という状況になったら、
競合の洗い出しが偏っていること、軸の設定がずれている(別の提供価値軸がある)ことを疑って、
マップの修正や新たな競合分析を実施する。
この試行錯誤を繰り返して、
「顧客に課題があるが解決策を提供している競合が弱く、自社の優位性が発揮しやすい領域」に
あたりをつけていくのだ。
もちろんそのような領域が見つかったとしても、
実現難易度が高いが故に残っている事も多く、一筋縄ではいかない。
しかし、その領域は間違いなくビジネスチャンスだ。
テクノロジーが発達した現代においては、新しい事業やプロダクトの改善コストが従来よりも
大きく抑えられるようになり、ちょっとした課題はすぐに誰かが解決してしまう。
WEBサービスであればその日中に改善するという事さえ可能である。
加えて、あらゆる物事に一定の快適さ・便利さが担保されている時代なので、
そもそも大きな課題は新しく発生しにくくもある。
つまり、簡単に実現できるような大きなビジネスチャンスなどは残っていないのだ。
したがって、見つけたビジネスチャンスがたとえ困難だとしても、早く着手し、
長く取り組み続けることが成功の秘訣であり、それこそが大きな競争優位性の構築になるという事を
肝に銘じておこう。
市場分析で自社の優位性が発揮しやすい領域が見つかったら、
その中でも特に自社の競争優位性が発揮しやすく、売上獲得につながりやすい顧客群を
「ターゲット」と定めよう。
自社分析の目的は共通認識づくり
顧客分析・競合分析を行ったら、次は自社分析を行っていく。
自社分析の項目例は改めて図:3C分析を参照してもらえればと思うが、新規事業企画の
自社分析で最も重要なのは「自社の強み・弱みを明確にし、チームで共通認識をつくること」だ。
誰もが自社の強み・弱みについてはある程度理解しているのだが、
競合分析の結果、競争優位性になると考えていた自社の強みが実はそうでもなかった、
と認識が改まることもしばしばある。
また、技術が強い会社は自社の最新技術を過大評価して、顧客課題への活用度を軽視しがちだったり
(=最新技術が強みにならない)、営業が強い会社は販売力以外の強みをなかなか認識してくれないなど、
自社の強み認識はバラついているものだ。
自社の強みが競争優位性を考える基準になるため、ここに共通認識がないと議論が収束しない。
共通認識をもちやすくする工夫として有効なのは、Before-Afterで議論をすることだ。
顧客分析・競合分析を行う前に、まず自社分析を行ってチームメンバーそれぞれの強み・弱み認識を共有する。
ここで「誰が・何を強みだと考えているのか」が明確になる。
そして、顧客課題の抽出・競合分析を一通り終えた後に、改めて事前に考えていた強みと関連づけて
話し合いを進めるイメージだ。
具体的には、「AIやIoTという最新技術を活用して理想の状態を目指す前に、もっとシンプルに・大きな投資を
せずに段階的に業務効率化したい」という顧客の声を引用しながら、技術活用に意識が強い人と議論をする。
反対に「御社は圧倒的に使いやすいUIをもったWEBサービスを、他社よりも必ず早くだす事ですね」という
顧客の声を引用しながら、販売力の強さを過大評価している営業と議論する、などである。
ポイントは、自分の考えと違う意見をもつ顧客の生声に触れてもらうこと。
自社の強みであれ・競合優位性であれ、社内で認識がそろわない時は、
顧客の声を基準に議論を進めていくと共通認識が持ちやすくなる。
したがって、顧客課題を発見する際に行うインタビューやヒアリングは、
基本的にチームメンバー全員で参加した方が良い。
特に意見がわれているテーマやメンバーとの認識を揃えるためには、
顧客課題や市場分析の結果に対して同じ情報を共有していることが不可欠だ。
この情報量が揃っていないと議論が収束しないため、
ビジネスプロデューサーは個々のチームメンバーが保有している情報量を考慮して、
インタビュータイミングや同席者を設計する必要がある
繰り返し伝えているように、顧客課題が新規事業の企画内容やチームの共通認識形成の肝になる。
したがって「誰に・どんな内容を・いつインタビューするのか」というインタビュー設計の精度は
非常に重要だ。
プロジェクトをもっとも俯瞰している人間が、誰に・何を聞くべきか、
チームに足りている・足りていない情報は何かを的確に判断しやすいし、判断できるべきだ。
チームに戦略コンサルタント・リサーチャー・マーケターがいれば設計を助けてもらえるが、
丸投げは止めたほうが良い。
インタビュー設計は、新規事業企画でもっとも重要な工程になるので、
ビジネスプロデューサー自らがプレイヤーとしてインタビューの精度を担保していこう。
このような工夫を盛り込みながら3C分析を進め、
「顧客に課題があるが解決策を提供している競合が弱く、自社の優位性が発揮しやすい課題」を選び、
特に自社の競争優位性が発揮しやすく、売上獲得につながりやすい顧客群(=ターゲット)を策定していく。
それではまた。